数学セミナー1978年7月号に島内剛一先生が寄稿した「万年七曜表」に登場する計算尺については, すでに2回のブログで説明した.
今回は円形計算尺によるものを話題としたい. 私はこれが一番好きだ.
前回の円筒式のものを見れば, そのまま円形にもなりそうに思うが, 島内方式の円形計算尺は, また趣向が違って, 次のような形をしている. 島内流にいうと上からA,B,Cである. (私の流儀で書き直しているから数セミの図とは多少違う.)
これらを重ねるのでA,B,Cをそれぞれ黒, 青, 赤の各色で示す. A, B, Cは紙に書き込まれ, 共通の中心の回りに回転出来る. Aには時計でいえば1時方向, 3時方向, ..., 11時方向には, Cにある月名を見る穴が開いている. (島内式では5時と7時方向にしかない. 紙方式ではAとCの間にBがあるので, Bにも同じ半径で5時方向から7時方向までの円弧状の穴がある.)
Aの黒文字は西暦の上2桁で, 外周の0から15がユリウス暦, 内周の15から22がグレゴリオ暦だ. Bの青文字は外の一周が日付, 内側の3周は西暦の下2桁. Cの赤文字は, 外が週日, 内側が月名である. 週日のRは木曜のこと.
前回と同様, まず2014年7月について, これを使ってみるには, まず11時方向の黒の上2桁(20)と7時方向の青の下2桁(14)を合わせる. 下の図は黒はそのままで青を右方向に4時間分ほど回転している.
黒と青をそのように合せてから, 外側の赤の紙を, 週日名と日付が合わさるように回転し, 黒の月名用のどれかの穴から目的の月名が見えるようにする. この図では9時方向の穴に赤字の7が見える. 週日名は円周に沿って6回繰り返すので, 月名は6個の穴のどれで見えてもかまわない. このように回転すると7月1日が火曜なのが分る.
ところで, その穴で7が端の方のあるのは, ここで丸めているからで, 赤字の紙は青字の日付と赤字の曜日が重さなるように, 離散的に動かすから, このようになる.
5時方向の穴に4が見えるのは, 4月と7月は曜日の関係が同じだからだ.
再び前回同様に2000年1月について試みると
のよう黒の20と青の00が重さなり, 11時方向の枠に1が入り, 1日の相方に土曜の方のSが來るので, 1月1日は土曜であった.
例によってこの仕掛の説明である. 2014年7月の計算法について, mod 7の図を示すと次のようだ.
2014の上2桁は20なので, 黒の目盛のf(20)=5.875にマークする. 下2桁14ではg(14)=17なので, mod7をとり, 青の3にマークし, これらを合せる.
青は1.875分右に移動する. 今は赤も青と一緒に移動する.
このとき赤のb(7)=13.25は黒の目盛上では赤点の1.125に対応し, これを丸めると1になる. 従って7月0日は月曜だ.
5.875+17+13.25=36.125=1.125 mod 7
2000年1月で試みると
5.875+(-0.25)+6.75=12.375=5.375 これが黒目盛上の赤点の位置で, これを丸めて1月0日は金曜である.
調べようとする年月の0日の曜日までは分ったが, これをカレンダーに対応させるにはまたひと工夫がいる.
とりあえず青に下の図のように, 1,2,...,7を書き入れる. これが日付だ. また赤にも図のように曜日を書き込む. そして赤目盛を動かす.
また黒目盛の0(mod 7だから7も)の両側に0.5の幅をとり(つまりこの範囲を丸めると0になる), 赤目盛上の月の値の黒マークがその範囲に入るように, 青と目盛の位置を合わせながら移動するのである.
2014年7月で使ったふたつ上の図の赤目盛は一目盛分左にずれて, マークが7付近に近づき, 青の1日が赤の火曜に対応する.
2000年1月での図もこのようになる.
要するに日付と曜日はなんとなく書き入れておき, 赤目盛の黒点を黒目盛のどの値の範囲に置くと曜日と日付が対応するか試み, その範囲が0付近になるように日付を再調整したまでである.
なかなか楽しい島内方式の検討であった.
私は例によってPostScriptを活用したが, 島内さんは「円周を42等分するには, まずコンパスで6等分し, それをさらにコンパスまたはディバイダで7等分するのがよいだろう.」と書いているから, そのようにして作図していたのかもしれない.
いまやこの計算尺を作るにも文明の利器が出現してきているが, 一方計算尺がなくても曜日が簡単に分かる手段も増えていて, 計算尺の出番もない.
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