復活祭が何かも知らぬ小学校の上級のころ, 大叔父が「今日は復活祭だよ」といい, 手元のSOD(Standard Oxford Dictionary)を開きながら「春分の後の満月の後の日曜」と不思議なことをいったのが興味を持ったきっかけであった.
長ずるに及び, 折がある度に復活祭の日程計算の資料を取り込んできた. ずいぶんいろいろなことが分かってきたが, 今回話題とするのは, 我が愛読書「Calendrical Calculations」の8章The Ecclesiastical Calendarsの扉のページにあるFinger calculation for the date of Easterについてである.
この図の周囲には1582年から1699年, 1700年から1799年, 1800年から1899年の黄金数に対する歳首月齢(epact)の表とドミノ文字(dominical letter)の表があり, もちろん何語か知れぬが(恐らくスペイン語)使い方の記述もある.
最初の表は下のようだ.
[1582]つまりグレゴリオ改暦の年は, 黄金数が6, ドミノ文字がGであったことが分かる. 他にもこういう年の表示が5カ所あるが, 解像度が悪く判読できない.
ドミノ文字は毎年と閏日に1文字ずつ前へ戻る. 従って表を右端から眺めるとまずD, その前年が閏年で3月以降がE, 1,2月がF, 更にその前年がGのようになる.
最後がBからGになるのは改暦のせいだ. 改暦で10日抜けたから, 普通なら1582年のGから1583年はFになるのだが, G,A,Bと3(10 mod 7)日分進み, Bになっている. ここをCに書き直すと, この表は28個の場所があるから, ドミノ文字の一周分になることが分かる.
さて, 1600年はこの表の右端で, 黄金数は(modulo 1600 19)→4だからそれに1足して5. よって歳首月齢は, 5の下の段を見て15. 1月1日の曜日は(modulo (+ 1 (jd 1600 1 1)) 7)→6 だから土曜で, B. 表では右から10個めのABと上下に並ぶのの下3月は下のAになる.
1600年の復活祭は別の資料を見ると4月2日であった.
ここで手の掌の図を見る. 指の内側にあるのが歳首月齢なので, 15を探すと人差し指の左縁のDとある内側に15が見える. そこから右に指の縁を辿り, 最初のドミノ文字Aを探し, その位置を覚えておく.
次に親指の左縁のDのところに22とあるが, これを3月22日として右へ23日, 24日,...と先ほど覚えた位置まで進むと, そこが4月2日になるのである.
指の形はどうでもいいらしいから, 指の縁を直線に延ばして描いたのが次である. 上の線の右端から下の線の左端へ繋がる.
これを見ると歳首月齢が一通り書いてあり(*や24,25だったり,XXVは今は無視), その右隣からドミノ文字が一週分書いてあるのが分かる.
歳首月齢が分かると春分満月も一意に決まる. それがこの線図に赤字で書いたものである. 1600年の例でいえば, 歳首月齢が15だと春分満月が3月29日であり, その直後の日曜は右にドミノ文字を探せばよいわけである.
という次第で, finger calculationとはいうものの, 要はこの対応表だけであった.
西暦年から黄金数は簡単に分かるが, ある年のドミノ文字は西暦年の下2桁を28で割った剰余で表を引くのであろうか. その辺は何語かで書いてあるし, 鮮明さも欠くので, 想像するしかないようだ.