2008年5月30日金曜日

天文時計の鐘

N.J.A.Sloaneの書いたMy Favorite Integer Sequencesという記事を見つけた. 面白いことがいろいろある中で, あ!と思ったのは

1, 2, 3, 4, 32, 123, 43, 2123, 432, 1234, 32123, 43212, 34321, 23432, 123432, 1234321, 2343212, 3432123, 4321234, 32123432, 123432123, 43212343, 2123432123, 432123432, 1, 2, 3, 4, 32, 123,

の数列であった.

説明によると, これはプラハの天文時計(astronomical clock)の鐘の鳴り方だそうだ.

数列の先頭からこのように, 1時には1; 2時には2,...,と鳴り, 正子(0時)には24時として432123432と鳴って, 1時には再び1と鳴る.

この数列の特徴は,

a) n 時に鳴る数列の和はちょうど n になる.

b) カンマを外してみると, 数列は基本パターン"123432"の繰り返しである.

ということだ.

1,2,3,4と書いてあるが, 鐘は1つで, KnuthのTAOCP, v4f2, 7.2.1.2にあるCambridge Forty-Eightのような, 4つの鐘をある順列で鳴らすのではない.

1は1回, 2は2回鳴り, 5時の32はまず3回鳴り, 次に2回鳴る. それを足しながら数えれば時刻が分かる仕掛けだ.しかし24まで間違えずに数えるには, 忍耐もいるであろう.

なぜこういうことが出来るか.

実は, この不思議な数列は24まで続くだけでなく, どこまでも作れる. 計算機が手元にあれば, お茶の子だ.

(1 (1))
(2 (2))
(3 (3))
(4 (4))
(5 (3 2))
(6 (1 2 3))
(7 (4 3))
(8 (2 1 2 3))
(9 (4 3 2))
(10 (1 2 3 4))
(11 (3 2 1 2 3))
(12 (4 3 2 1 2))
(13 (3 4 3 2 1))
(14 (2 3 4 3 2))
(15 (1 2 3 4 3 2))
(16 (1 2 3 4 3 2 1))
(17 (2 3 4 3 2 1 2))
(18 (3 4 3 2 1 2 3))
(19 (4 3 2 1 2 3 4))
(20 (3 2 1 2 3 4 3 2))
(21 (1 2 3 4 3 2 1 2 3))
(22 (4 3 2 1 2 3 4 3))
(23 (2 1 2 3 4 3 2 1 2 3))
(24 (4 3 2 1 2 3 4 3 2))
(25 (1 2 3 4 3 2 1 2 3 4))
(26 (3 2 1 2 3 4 3 2 1 2 3))
(27 (4 3 2 1 2 3 4 3 2 1 2))
(28 (3 4 3 2 1 2 3 4 3 2 1))
(29 (2 3 4 3 2 1 2 3 4 3 2))
(30 (1 2 3 4 3 2 1 2 3 4 3 2))

そこでどこかに繰り返しパターンがないかと, 図を描いてみた. すると1から15までのパターンと16から30までのパターンが殆んど同じになる. 16からは基本パターン1,2,3,4,3,2を1サイクル余計に持っているだけである. 従って31からも同じになると判明した.



10,11,12,13,14はそれぞれ15のcomplementの5,4,3,2,1と相補のパターンだし, 6と9, 7と8も相補パターンなことが分かる.

24がちょうどパターンの最後で終るのも幸いしている. 1から24までの和が300で基本パターンの和15の倍数なので, 当然だが.

1,2の繰り返しでも同様なことが出来ることが判明した.

(1 (1))
(2 (2))
(3 (1 2))
(4 (1 2 1))
(5 (2 1 2))
(6 (1 2 1 2))
(7 (1 2 1 2 1))
(8 (2 1 2 1 2))
(9 (1 2 1 2 1 2))
(10 (1 2 1 2 1 2 1))
(11 (2 1 2 1 2 1 2))
(12 (1 2 1 2 1 2 1 2))
(13 (1 2 1 2 1 2 1 2 1))
(14 (2 1 2 1 2 1 2 1 2))
(15 (1 2 1 2 1 2 1 2 1 2))

しかし, 1,2,3,4,3,2ほど劇的ではない.

2008年5月28日水曜日

火星

火星探査機がパラシュートで降下するのを, 他の火星周回衛星から撮影したニュースには驚いた.

いかにも画面を眺めて, 今だ! とシャッターを切ったかのようなシーンだが, そんなことは可能だろうか.

火星は昨年12月に衝の位置(火星, 地球, 太陽の順に並ぶ)にあり, 地球, 火星間の距離は0.6天文単位, 今年12月に合の位置(地球, 太陽, 火星の順に並ぶ)になり, 2.6天文単位だ. 今はその中間で, 多分2天文単位くらいであろう. 1天文単位は光で8分ちょっとの時間なので, そう考えると画面を眺めて地上から制御するのはまったく無理と分かる.

NASAのページを見ると, やはりフェニックスの軌道情報を送り, プログラムで制御して撮影したとあった. それにしても相当な離れ業である.

Camera pointing for the image from HiRISE used navigational information about Phoenix updated on landing day. The camera team and Phoenix team would not know until the image was sent to Earth whether it had actually caught Phoenix.

さらに普段は火星に向けて下を向いているカメラを, 斜め方向を撮影するため, 衛星の向きも変えたという. 見事な写真が送られてきたときの, 担当者の喜びが想像できる.

2008年5月27日火曜日

火星

太陽系の中で, 地球と火星は双子の惑星といわれる. 公転周期は地球が1年, 火星が2年. 公転半径は地球が1天文単位, 火星が1.6天文単位. (2年の方を知っていれば, Keplerの法則: 公転周期2/公転半径3=一定 から

(expt (expt 2 2) (/ 1 3)) => 1.5874010519681994)

だが, Bodeの法則を知っていれば距離は一発だ.)

この火星には火星人がいると思われていた. 運河らしいものが見えるからだ. 運河かどうかは分からないが, 火星の表面には多数の筋が見え, それが十字形で交差している. 一方, ガラスの割れ目など自然に出来る筋は, 新しい割れ目が既に割れている割れ目を横切らないから丁字形になる.

というわけで, 火星人襲来というSFはいくつかあるらしい. 私が小学生のころ愛読したのに, 海野十三の「火星兵団」がある. ある晩, 千葉県印旛沼の辺りに火星からのロケットが着陸. 火星人が地上に降り立つ.

H.G.Wellsによると, 火星人は, おむすびのような頭から, 糸のような足が生えている, 細い足を持つ蛸のようだと思われていた. 重力が小さいから細い足で支えられる. 食べ物は苔みたいだから, それをなめる口はおおきい. 空気が薄いので音声は伝わらず, 目が口のようにものを言うので, 目もおおきい. 耳は退化した.Wellsはそういう火星人を想像した.

私が小学生のころ, 上野の科学博物館で, こういう火星人を描いた絵はがきを売っていた.

「火星兵団」によると, 火星にくらべて空気の濃い地球では, 潜水服か宇宙服のような容器を着て, 地上で活躍した.

火星人は「ヒュウーヒュウープクプク」というような言葉を喋る. そのままでは日本人には理解出来ぬが, 彼らはすでに日火両語の音声翻訳機を持っていて, 一方から火星語を入れるともう一方から日本語が出る. 逆ももちろん可能.

まぁそういう話であった.

さて今回, NASAの火星探査機フェニックスが火星の北極近くに着地(着火?)したというニュースだ. 送られてきた火星の地上(火上?)の光景は, 運河は見えねど, 想像とあまり違わない. (いちいち「地」を「火」と言い直すのも面倒だねぇ.)

こう描きながら想像するのは, 火星人はフェニックスをみて, 「これが地球人か」と思ったかということだ. 「地球人襲来」というニュースが流れているかと夏の夢を楽しんでいる.