2015年11月30日月曜日

菱形六十面体を織る

ネット上に山口大学理学部数楽工作倶楽部の菱形60面体編みというページがあった.

なんだか面白そうだとさっそく作って(編んで)みた. 下の写真がその完成品.



編むというのは糊を使わず, 紙の摩擦だけで固定されているからである. そんなことで菱形六十面体が作れるのかとうのが興味の中心である.

面を1/10にして正六面体で考えてみると, 下の図のように正方形を5枚繋げた(ペントミノの`I'の形)を環状にした帯を3個作り, 左から3個のような方向に置き, 左からx, y, zということにする. xとyの面が重なる手前左方向ではyがxの外に, yとzが重なる右方向ではzがyの外に, zとxが重なる上方向ではxがzの外になるように組み立てると, 右端のような六面体が出来る. いわゆるみすくみ状態になって下の帯を上から抑える構造に出来ている.



菱形六十面体もこの方針で作られいるようだ.

私は元の型紙をダウンロードしたのではなく, PostScriptで書き直し, 少し厚手の紙に印刷し, 山折り谷折りをした後, カッターで帯を1枚ずつ切離し, 裏の番号を写してから組み立てに取り掛かった. 小さいクリップを5個使い, 組み合わさった場所を仮止めしながら進む.

意外な方向に帯が折れていくのに戸惑いながら完成したのがこのブログの最初の写真である. その後, 構造を理解しようと思い, 各面に番号を振ったり分解したり組みなおしたり, 結局3回作った. もちろん後ほど早く完成する.

さて菱形六十面体は, 私の5年ほど前のブログ にあるように, 正十二面体が基本になっている. その12個の正五角形の各面を5枚の黄金比の菱形に置き換えたもので, 面も稜も凹んでいる. 正十二面体の各面を(変形した)菱形にした展開図が下だ. 12の面には白抜きでAからLまで記号があるが, これは元の型紙の12本の帯の左から右へA,B,C,...としたものに対応する.



真ん中辺のAの正五角形の外周に, オレンジ色の0,1,2,3,4が見えるが, これが型紙の左端の帯で, 0と1の間は9の下を潜り, 1と2の間は50の下を潜り, 2と3の間は22の下を潜り,...という風になって, 0はJの面の, 1はBの面の, 2はKの面の一部を構成する. つまりAの帯はAに接続する5個の面を作るように出来ている.

そうしてみるとAの帯は, 0, 9, 1, 50, 2, 22, 3, 28, 4, 49の菱形を外に出たり下に潜ったりしてして立体を作ることが分かる. というより, 型紙の各帯の外に面する菱形に, Aには上から0から4, Bには5から9, Cには10から14,.. Lには55から59と番号を付け, その番号を展開図に書き込んだものである. (外周のギリシア小文字は対応する辺同士を示す.)

この番号を型紙に写したのが下の図だ.



A,B,C,D,Eの帯の上から4段目が左から50,51,52,53,54. F,G,H,I,Jの帯の最下段が左から55,56,57,58,59になっているのは, それぞれKとLの帯の下を潜って, KとLの面の周囲を固めているのである.

ちょっとややこしいのが糊しろの部分で, 正六面体のように簡単ではない. その説明はまたの機会にしたい.

もしかするとこの編み方はこちらが先かもしれない.

2015年11月28日土曜日

Zuseの計算機

Zuseの計算機Z1は金属板の移動で論理素子を実現していて, その金属板は重なっていてるから, これで上手く動くか心配になる.

現に, 戦後再生されたZ1はZuseの存命中は稼働していたが, その死後にはもう動かなくなっているらしい.

さて, 前回の基本素子に続けてAND, OR, XORの回路は次のようだ. 前回のリレーもゲートだからANDでもあるが, 今回のは2つの入力のANDでゲートを制御するものである. (OR, XORも同様)

先ずはAND. 下の2個は入力の制御板, 上の右が出力の受動板, 上の左がクロック信号に相当する能動板である. 然しANDにはもう1個, 中段に遊動板というものが存在する. この図は入力A, Bが共に0の状態で, 棒は2本とも下の位置にある.



この時能動板が右に動いても, 能動板の棒の左に隙間があるので, 棒は動かず, 受動板も動かない. つまり出力も0である.

A=1, B=0の時は, Aの棒が上にいるので, 能動板に従って棒は右に動く. すると遊動板も棒に押されて右に動く. しかし右側の棒はB=0なので下にいて, 遊動板が右に動いても棒が右に動くことはなく, 受動板も動かない.

反対にA=0, B=1の時は遊動板の右の棒は上の位置にあるが, そもそも遊動板が動かないので, 受動板も動かない.

両方が1なら遊動板も動き, それに押されて右の棒も右に動き, 受動板も動いて出力が1になる.

ORは遊動板もないのでもっと簡単だ.



下の2個が制御板である. 上の左が能動板. 右が受動板である.

入力が共に0, 2本の棒が下にあると, 能動板が右に動いてもどちらの棒もそのままなので, 受動板は動かず, 出力も0である.

いずれかの入力が1なら(共に1でも), 少くても1本の棒が上にあがり, 能動板が右に動くと上にあがっている棒に押されて受動板が右に動く.

排他的論理和XORは一番面倒である.



下の制御板, 上左の能動板, 上右の受動板の他に中段に遊動板が2枚ある.

まずA=0, B=0の時. この図の構造で能動板が右に動く. すると上の遊動板は右に動くが, 右の棒の左に隙間があるので, 右の棒は動かない. 下の遊動板は左の棒の右に隙間があるので, これは動かず, 右の棒も動かない.

A=1, B=0の時に能動板が動くと, 上の遊動板は動かないが, 下の遊動板は動き, 下の遊動板の右の棒も動いて受動板が動く.

A=0, B=1の時の能動板が動くと, 上の遊動板が右に動き, それに従ってその右の棒も動くから受動板も動く.

A=1, B=1の時は, 上の遊動板は動かず, 下の遊動板は動くが, 右の棒の左の隙間のせいで右の棒は動かず, 受動板は動かない.

なかなかよく出来ている.