2011年3月14日月曜日

古い計算機

東京理科大学の近代科学資料館には古い計算機の貴重な収集がある. なんども訪れて眺めているが, その中に使い方がわからない計算機があった.

先日お願いして, それをよく見せて頂き, 使用法が確認できた. 今回はそれを説明したい.

下の写真は, Calculatorという, なんの変哲もないない名前の計算機である. 会社もCalculator Corporationといい, 銘板からすると, ミシガン州のGrand Rapidsという町にあったらしい.



真ん中辺を拡大すると, ピントは甘いが,



のようだ. この4桁分を説明用にPostScriptで描いたのが次である. この方で話を進める.



まず1桁分を取り出したものを2個並べる.



こういう計算機の基本構造は, 10の状態を取りうる十進歯車を必要な桁数分用意し, 各桁の歯車を加算する数だけ回転し, 繰上げを次の桁に伝えることである.

この計算機の十進歯車は, 中央の灰色の部分で, これが回転する. ラチェットがあるのか, 離散的な位置に止るみたいである. 周囲に白い窪みが10個見えるが, その内1つが他より大きく窪み, 下に書いてある赤字の数字が読める. その数字がその桁の歯車の状態である. 左は0, 右は5を示している.

この調子で, 上の4桁の状態を読んだのが, それぞれの右下の0000, 1234, 6912である.

次は加算の仕方. タイガー計算機などでは, 十進歯車に噛み合う出入りピンの数を調整して, 0から9までの数を足す. この計算機ははるかに簡単で, ひと様がスタイラスという棒を窪みに差し込み, 昔の電話器のダイアルのように, 右下に飛び出したフックに当るまで, 右回転をするのである. 加算すべき数は外側に白抜きで書いてある.

白い窪みにある, 青い点は, スタイラスを差す場所で, 一番上は左から順に1, 2, 3, 4である. それぞれ回転すると, 最初0, 0, 0, 0であった歯車は, その数だけ状態が進み, 中央の図のようになる.

中央の図になったところで, 再び5, 6, 7, 8にスタイラスを差し込み, 回転すると, 下のように, 加算が出来て, 6, 9, 1, 2になるのである.

極めて簡単だ. 加算では歯車は電話のダイアルのように右にしか回さない. このままでは減算には対応していない.

そうそう, 加算の前に, 各桁を0にリセットしておく必要がある. それには大きい窪みにスタイラスを差して, フックまで左回転する. (と書いたウェブページがあるが, 左に回転出来るのだろうか.)

問題は繰上げだ. 最初のズームの写真を見ると, 下の桁の7と8の間から, 上の桁の0と9の間にかけて, 盛り上がっている形がある. ここに繰上げの仕掛けが隠れているらしい. いろいろ想像しているが, こんなに簡単な仕掛けはまだ思いつかない.

なお, 古い計算機を収集している, オーストラリアのJohn Wolffさんのウェブページにも, この計算機の簡単な説明があった.

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