2011年3月15日火曜日

古い計算機

東京理科大学の近代科学資料館で見せて頂いた, もう1つの古い計算機はADALLというものだ. 丸いので変な向きに置いてあるが, 以下のである.



これは英国バーミンガムのTemple Courts, Temple RawにあるThe ADALL Co.製らしい. いうなれば百進法の計算機である. 気宇壮大だ.

いつものように自分で描き直したのが以下だ.



灰色の背景の手前にある白い歯車状なのが, 百進歯車である. その少し内側に00から99まで十進2桁の数字(内数字)が書いてあり, 中央右の窓の内側に見える数字が歯車の状態を示す. この図の状態は00である.

さて, これに0≤n<100を足すには, 外側の数字(外数字)のnのところにある, 歯車の窪みにスタイラス(最初の写真の箱の蓋に見える)を差し, 真横にあるストッパーまで右回転する. そうするとnステップだけ百進歯車が回転し, 状態がnだけ進む. 上の図で, 窪みの説明が差している先は, 11に対応するそれである. 0に対応する窪みはストッパーに接していて, もう回せない.

A足すBの計算には, 最初, 図のように状態を00にしておき, 外数字のAのところから, Aだけ回転; 次に外数字のBのところから, Bだけ回転すると, 窓に現れる内数字がA足すBになる. AもBも99まではOKだが, 足した結果が100を超えると, 状態はA+B mod 100 になる.

この計算機の秀逸なのは, 内側にある渦巻きである. レコードの溝状というか, 蚊取り線香状というか, 1本の溝の線で出来ている. 歯車を右回転すると, 渦巻きは順に内側に入るようになっている.

長窓の中で, この溝には, 3mmφくらいのボールが載っている. 加算の結果が増えると, ボールは徐々に内側に移動する. 長窓の上に, 右から1, 2, ..., 11 と書いてあり, ボールが1と2の間の下にあれば, 加算の結果の百の桁は1ということになる. だから, 2桁の数を何回も足しても, 総和が約1100になるまでは, この計算機は正確な答を示す. もちろん, 下の2桁が丁度00以外では, ボールは百の桁の数字の真下にはないが, 時計の短針が, 1時と2時の中間にあっても, 1時台の時刻が分かるように, この計算機でも百の桁は読み取れるはずである.

この計算機はいうなれば, 離散的円形計算尺である. 計算尺は普通は直線で, A尺とB尺が並び, A尺のa点にB尺の0を合わせると, B尺のbに対応するA尺はA尺の0からa足すbの距離になる. 従って, A尺とB尺を対数目盛にするとa掛けるbが計算できる.

ところで, 普通の計算尺では, A尺のaにB尺の左端を合わせるか右端を合わせるかが, 悩ましいところである.



上の計算尺は3掛ける2で, B尺は左の1をA尺の3に合わせ, B尺2のA尺には6がある. 下は3掛ける4で, 12になるので, B尺の右の10をA尺の3に合わせている.

この面倒を省いたのが下の円形計算尺である. ADALLの計算機は, 対数目盛の代りに等間隔に目盛をつけた加算用の計算尺である.

John Wolffさんのウェブページにも, この計算機の簡単な説明がある. 同ページによると, 理科大でこの計算機の箱に入っていた数表の説明もあった. 要は1シリングが12ペンスなので, sシリングpペンスを十進法にし, 12*s+pペンスに換算する表だったらしい.

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