2014年7月14日月曜日

曜日の計算

私が2011年5月25日や6月5日のブログに書いた故島内剛一(しまうちたかかず)先生の曜日の計算は興味深いものであった. 先生の数学セミナーの記事(1978年7月号)には驚くようなアルゴリズムが沢山登場する.

その中で, しばらく私が読み飛ばしてはいたものの, 気になっていたのは, 「計算尺方式の万年七曜表」であった.

先日来, ちょっと読み直してみたが, もとの図を島内さんがどのようにして書いたか不明である. 雑誌に掲載された図の正確さもよく分らないので, 使い方が分かった時に, 自分で図を書き直してみた. (元の記事には「日のひと目盛の1/8=0.125までの精度はどうしても必要」と書いてある.)

ざっといえば, 下のようなものである.



上下2枚の図があり, どちらも半分が上下逆になっているのは, 中央で折って表と裏にするのである. 島内さんは上をB, 下をCといった.

Bの上半分は横に2倍にしたカレンダーである. 左側のどの列から始めても一週間分があるようになっている. 下半分は西暦の下2桁の表だ. こちらもかなり冗長である.

Cの下半分は月名である. 左の方, 3と11が縦に書いてあるのは, 3月と11月の曜日が同じことをしめす.

上半分は西暦の上2桁になっている. 0から15までの部分と15から22までの部分があるが, 前者はユリウス暦, 後者はグレゴリオ暦に対応する.

私は島内さんの記事のこれらの図をコピーし, 切り抜き, BとCを計算尺のように滑らせながら操作してみて, 使い方が分ってきた.

逆さまの図は見にくいから, 正立させた図にしよう. 上下の余白も省いた.



この上の図では上と下が表面と裏面に相当する. それぞれの面の途中の横線が計算尺の滑る位置だ. 上のカレンダーの中央付近に緑色の枠が見えるのは, 通常の計算尺にあるカーソルのようなもので, その内部がその年その月のカレンダーになる.

前の説明の繰り返しだが, 上から月, 日, 年の下2桁, 年の上2桁である.

さて, 2014年7月のカレンダーを見るには下の図のようにする.



下の西暦上2桁の20と, 上の西暦下2桁の14が合うように下の目盛を右にずらす. すると上の月名の目盛は(上下反転したので)同じ長さだけ左にずれる.

日の表の上端に曜日の区間の境界を示す青い線があり, 7の下の対応する区間の中央にM(monthのつもり)がくるように緑の枠を滑らすと, 7月1日が火曜になり, 7月のカレンダーが得られる仕掛けである.

目盛合わせが正確にできるよう, この図には多くの縦線が引いてある. ユリウス暦とグレゴリオ暦の間には微妙な差があるので, グレゴリオ暦の部分は青線で表示する.

この計算尺でカレンダーが出来る魔法のような理由は次のとおり.

式が導出された経過は省略するが, 島内方式で西暦y年m月d日の曜日は

round(f(y idiv 100) + g (y % 100) + b (m) + d) % 7

で計算する.

y idiv 100は西暦の上2桁. y % 100は下2桁である.

f(y)= - floor(3(y+1)/4) - y + 6 + (y % 4 == 0 ? -0.125 : +0.125)
(ユリウス暦に対するfの式は省略)
g(y)= y==0? -0.25 : (y + floor (a/4) - y % 4 ==0 ? -0.5 : 0)
bは1月から12月について
6.75, 2.75, 3.25, 6.25, 1.25, 4.25, 6.25, 2.25, 5.25, 0.25, 3.25, 5.25
である.

y=15から22までのfの値は
0.125, 5.875, 4.125, 2.125, 0.125, 5.875, 4.125, 2.125

y=0から15までのgの値は
-0.25, 1, 2, 3, 4.5, 6, 7, 8, 9.5, 11, 12, 13, 14.5, 16, 17, 18

アルゴリズムを解明すべく, これを次のような目盛に記入する. gは7の法をとってある. 目盛を下からf, g, m, dということにする. dの線の上の1〜7はカレンダーの一番上の数である.



いま2014年の計算をしようとして, 下の図のようにfの目盛の20とgの目盛の14を合わせると(赤い線), gの0はfの1.875に合う.

これはf(20)=5.875, g(14)=3の和 5.875+3=8.875=1.875(mod 7) である.



通常の計算尺でA尺とB尺を使い, log x + log y を計算するには, A尺のlog xのところにB尺の1(原点)を合わせ, B尺のlog yに対応するA尺を見るとlog x + log yになっている.

しかし今の計算では, gの目盛が逆向きにとってあるので, 通常の計算尺の減算の要領で加算が出来るようになっている. 結局fが右に1.875ずれているわけで, 同時に一番上のmも左1.875(=f+g)ずれている. mでの7月のb=6.25に対応するdの位置(緑の線)は, f+g+bの値f(20)=5.875, g(14)=3, b(7)=6.25の7を法とした和1.125)になっており, 丸めると1になる.

7月はこの値が1. ということは1日はd=1を足すから2になって火曜になる. 従ってカレンダーの中央の水曜を2日の上に置くことになる. dの値の1の上に2とある理由だ. 丸めた値が2だと1日は3だから水曜で, カレンダーの中央を1日に置く. dの目盛のカレンダーの値はそのように決めてある.

この説明も回りくどいが, 実は私も理解に到達するのに結構苦労した. 島内さんの発想に驚くばかりである.

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