2015年12月11日金曜日

菱形六十面体を織る

前回のこの題名のブログの終の方に「ちょっとややこしいのが糊しろの部分で, 正六面体のように簡単ではない. その説明はまたの機会にしたい.」と書いたその部分の説明だ.

下の絵を見てほしい. 線がごちゃごちゃ描いてあるが, 前回の最後の図の各帯が菱形六十面体のどの面を形成しているかを示している.



例えばAの帯は, 真中少し下のAの回りのオレンジ色の線に対応している. Aの, 時計でいえば1時の方向に0の面があり, そこから右下へ進んでαの辺から外へ出, 少し下のαの辺から展開図の戻り, 一つおきに1,2,3の面を通り, θから再び外へ出, 上のθの4から戻ってくることを示している.

緑で示すBの帯は, 5,6,7,8,9だが, 5はIの五角形の下の方にあり, 右上に進み, γから出て, 右下のγから戻り, Bを取り巻くように6,7,8,9が見える. Bの場合, 外へ出るのは1回である.

KとLは, 外へ出ないから遥かに簡単である.

ところでこれらの閉曲線には, その色で塗りつぶした三角形と, 白抜きの三角形が書き込んである. 実はそこが糊しろである. 白抜きの方が出発点. 線上にある三角の頂点の方へ進む. これが前回の帯の絵の上端に相当する. Aで言えば0の上の白い部分(下の49と重なる部分)であり, 塗りつぶしの方が下端になる. 線上の三角の頂点の方から下端に到る.

これを眺めると, K, Lは別として, 他の帯は上の五角と下の五角を貫いていて, A,B,C,D,Eは下では円弧, 上では直線であり, F,G,H,I,Jは逆になっている. K以外の糊しろはすべて上の五角の方にある.

つまり下の五角は出来上がった正十二面体の下半分の鉢を構成し, 上の五角は上半分を構成していたわけだ.

底の方から組み立てて, 糊しろが込み合う上面で組み立てが完了するような構造になっていた.

だから組み立て方は, A,B,C,D,Eをほぼ中心で重ね合わせ, その周囲をKの帯で固定し, その辺からF,G,H,I,Jも加わって下の鉢を作り, 中段を過ぎて上の周囲の面に至り, それをLで補強した後, F,G,H,I,Jを上の面に相互に差し込むのである. (糊しろといっても糊をつけて貼るのではない.)

元々の帯が巧みに設計されていて, この図を描くにも, 円弧と円と直線の基本の曲線群を用意してしまえば, たちまちにして完成した次第だ.

2015年12月3日木曜日

EDSACのプログラム技法

EDSACのプログラムを集積したウェブページがある. (詳しくはそこの "To browse the collection of software, click this link."をクリックする.) ここには私の書いたエラトステネスの篩も置いてあって嬉しい(21行目). そこにDavid J. Wheelerの素数のプログラムがあった(15行目). Martin Campbell-Kellyの書いたEDSACの文献(Programming the EDSAC: Early Programming Activity at the University of Cambridge, IEEE Annals of the History of Computing, Vol 1, No. 2.)によると, EDSACには「EDSACの本」で有名なイニシアルオーダーの前にもう一つのイニシアルオーダーがあって, 1949年5月6日の運転開始の日にはその方が使われていた. 同年6月22日にケンブリッジで開催された計算機会議でEDSACが公開され, その時, Wilkesの書いた平方の表とWheelerの書いた素数のプログラムのデモが行われた.

Wheelerは1927年生まれだから, 22歳のWheelerが当時どういうプログラムを書いていたかには非常に興味がある. これはもう読むしかない.

ところがその内容たるや
[Primes]
T107SO92SO93SO94SS5ST6SO95SO95ST7S
A96SR4SS97SE42SL4SA97SG45SS98SG100ST7S
A97SA4ST97SH97SN97SL64SL64SA96SE39ST7S
A96SU1SA4ST96SA99ST97SS88ST7SH91SA1S
E72SV91SS89SE71SA89STLOSH90SV1SL4S
TLA7SA98SG67SA6SA4SG36SE33SP2SP500S
JSP16S#S@S&S!SP2LP1LPLP1L
T7SA99ST97SA4SA96ST96SE39S
だけなのだ. これを読む手がかりはここにある.

読んでみると, やはり面白いプログラムであった. 特にそのプリントルーチンには感心した. 以下にその解説をしたい.





31番地 T107S. このプログラムは最初のイニシアルオーダーInitial Order1で読み込むが, 読み込まれるプログラムが106番地まであるなら, 最初をT107Sとするのであった. つまりイニシアルオーダーには格納命令があり, 最初はT31Sになっていて, 31番地から命令を格納する. つまり, T31S, T32S, ..と変わっていく. そして格納作業の終りは, 格納命令から31番地にある命令を引き, それが正であるかを見る. T107Sを引くと0(正)になるので31番地へ進んでくる. このT命令はアキュムレータのクリア用にも見えるが, すでに0になっている.

32番地は92番地にある#S(figure shift)を出力する. 以下のプログラムが数字を出力するので, その準備.

33,34番地では93, 94番地にある@S(cr), $S(lf)を出力. 次のS5Sはイニシアルオーダーの5番地にあるP5S(10*2^-16)を引き, -10を作り, 6番地(m[6])に入れる. 6番地は -10,-8,-6,..と変わり, 1行に5個の素数を印刷する.

37, 38番地. !S(space)を2個出力. (このプログラムのあちこちにある)T7Sは(67番地のものを除いて)アキュムレータをクリアする.

このプログラムでは素数の候補pから3,5,...と奇数(d)を引き(以後 dを減数という), 0になるかどうかを見ている. (前にも書いたようにEDSACには除算命令はない.) pは96番地, dは97番地にあって, それぞれ5と3に初期化されている.

40から46番地はそのpからdを引く. ただ初めは16*dを負になるまで引き, 次にdを正になるまで足す. これでpをdで割った剰余が得られる. 実際には16*dを引くのではなく, pを4ビット右シフトして引き, 4ビット左シフトして足す. (おおざっぱにいうと単にdを引くより, 16倍加速されている. こういう剰余の取り方はEratosthenesの篩でも使える.)

47番地. EDSACには零ジャンプがないので, 正になったところで1を引き, 負なら零であったということで, 合成数の判定をして100番地へ進む.

剰余が0でなければ, 50,51,52番地でdを2増やし, 53番地からH97Sで乗算レジスタにdを置き, N97S, L64S, L64Sで-d^2を作る. それにpを足し, 減数の二乗が素数候補より小さければ39番地へ戻り, 次のテストに掛かる.

減数が大きくなって素数と判定出来ると, 60番地から先で素数の出力にとり掛かる.

U1Sで素数を1番地に入れ, A4Sでpを2増やして63番地で96番地に入れておく.

素数は4桁で出力するつもりで, 66番地で-4を7番地のカウンタへ入れる.

68番地から76番地は1桁の出力で, 1番地に1234があるとして説明すると, 68番地H91Sで乗算レジスタに2^-11を入れる(32*2^-16=2^-11).

アキュムレータに1234を足す. 72番地へ飛んで89番地にある1000を引く. アキュムレータは234(*2^-16)になり, 正なので71番地へ行く. V91Sだからアキュムレータは234*2^-16+2^-22になる.

再び1000を引くと今度は負になり, 74番地で1000を足し, アキュムレータは234*2^-16+2^-22に戻る.

これを0番地の長語に入れる. つまり左半分の1番地は234, 右半分の0番地はファンクション部に1となる. そこでo命令は0番地を出力するから1が印字される(EDSACの文字コードは2012年9月28日のこのブログ参照).

77番地から80番地は234を10倍する. H90Sで乗算レジスタに10*2^-4を置き, V1Sでアキュムレータは234*10*2^-4になり, 次の左シフトで2340になり, 1番地に戻される.

81番地からは7番地のカウンタを1足し, まだ4桁出力していなければ, 67番地へ戻る.

次は2340だから, 71番地のループは2回実行され, 右半分の方は2*2^-11になって2が印字され, 1番地は3400になる.

4桁出力すると84番地へ来て, 6番地のカウンタにA4Sで2を足し, 5個未満なら36番地, 5個終わっていたら33番地へ戻る.

一方合成数の時は100番地へ進み, 101, 102番地でdを3に戻し, 103,104,105番地でpを2増やして39へ戻る.

この解釈が正しければ, 期待される出力は
  0005  0007  0011  0013  0019
  0019  0023  0029  0031  0037
...
なる筈であった. サイボウズ・ラボの西尾君がEDSACのシミュレータを持っているというので, 試してもらったらその通りであったとメイルが来た.

このプログラムの疑問は素数候補が5から始まることである.

減数を3から始めると素数候補の3は割り切れるから, 3は素数にならない. 3を素数にするには2から割り始めなければならないからなのだ.

2015年11月30日月曜日

菱形六十面体を織る

ネット上に山口大学理学部数楽工作倶楽部の菱形60面体編みというページがあった.

なんだか面白そうだとさっそく作って(編んで)みた. 下の写真がその完成品.



編むというのは糊を使わず, 紙の摩擦だけで固定されているからである. そんなことで菱形六十面体が作れるのかとうのが興味の中心である.

面を1/10にして正六面体で考えてみると, 下の図のように正方形を5枚繋げた(ペントミノの`I'の形)を環状にした帯を3個作り, 左から3個のような方向に置き, 左からx, y, zということにする. xとyの面が重なる手前左方向ではyがxの外に, yとzが重なる右方向ではzがyの外に, zとxが重なる上方向ではxがzの外になるように組み立てると, 右端のような六面体が出来る. いわゆるみすくみ状態になって下の帯を上から抑える構造に出来ている.



菱形六十面体もこの方針で作られいるようだ.

私は元の型紙をダウンロードしたのではなく, PostScriptで書き直し, 少し厚手の紙に印刷し, 山折り谷折りをした後, カッターで帯を1枚ずつ切離し, 裏の番号を写してから組み立てに取り掛かった. 小さいクリップを5個使い, 組み合わさった場所を仮止めしながら進む.

意外な方向に帯が折れていくのに戸惑いながら完成したのがこのブログの最初の写真である. その後, 構造を理解しようと思い, 各面に番号を振ったり分解したり組みなおしたり, 結局3回作った. もちろん後ほど早く完成する.

さて菱形六十面体は, 私の5年ほど前のブログ にあるように, 正十二面体が基本になっている. その12個の正五角形の各面を5枚の黄金比の菱形に置き換えたもので, 面も稜も凹んでいる. 正十二面体の各面を(変形した)菱形にした展開図が下だ. 12の面には白抜きでAからLまで記号があるが, これは元の型紙の12本の帯の左から右へA,B,C,...としたものに対応する.



真ん中辺のAの正五角形の外周に, オレンジ色の0,1,2,3,4が見えるが, これが型紙の左端の帯で, 0と1の間は9の下を潜り, 1と2の間は50の下を潜り, 2と3の間は22の下を潜り,...という風になって, 0はJの面の, 1はBの面の, 2はKの面の一部を構成する. つまりAの帯はAに接続する5個の面を作るように出来ている.

そうしてみるとAの帯は, 0, 9, 1, 50, 2, 22, 3, 28, 4, 49の菱形を外に出たり下に潜ったりしてして立体を作ることが分かる. というより, 型紙の各帯の外に面する菱形に, Aには上から0から4, Bには5から9, Cには10から14,.. Lには55から59と番号を付け, その番号を展開図に書き込んだものである. (外周のギリシア小文字は対応する辺同士を示す.)

この番号を型紙に写したのが下の図だ.



A,B,C,D,Eの帯の上から4段目が左から50,51,52,53,54. F,G,H,I,Jの帯の最下段が左から55,56,57,58,59になっているのは, それぞれKとLの帯の下を潜って, KとLの面の周囲を固めているのである.

ちょっとややこしいのが糊しろの部分で, 正六面体のように簡単ではない. その説明はまたの機会にしたい.

もしかするとこの編み方はこちらが先かもしれない.

2015年11月28日土曜日

Zuseの計算機

Zuseの計算機Z1は金属板の移動で論理素子を実現していて, その金属板は重なっていてるから, これで上手く動くか心配になる.

現に, 戦後再生されたZ1はZuseの存命中は稼働していたが, その死後にはもう動かなくなっているらしい.

さて, 前回の基本素子に続けてAND, OR, XORの回路は次のようだ. 前回のリレーもゲートだからANDでもあるが, 今回のは2つの入力のANDでゲートを制御するものである. (OR, XORも同様)

先ずはAND. 下の2個は入力の制御板, 上の右が出力の受動板, 上の左がクロック信号に相当する能動板である. 然しANDにはもう1個, 中段に遊動板というものが存在する. この図は入力A, Bが共に0の状態で, 棒は2本とも下の位置にある.



この時能動板が右に動いても, 能動板の棒の左に隙間があるので, 棒は動かず, 受動板も動かない. つまり出力も0である.

A=1, B=0の時は, Aの棒が上にいるので, 能動板に従って棒は右に動く. すると遊動板も棒に押されて右に動く. しかし右側の棒はB=0なので下にいて, 遊動板が右に動いても棒が右に動くことはなく, 受動板も動かない.

反対にA=0, B=1の時は遊動板の右の棒は上の位置にあるが, そもそも遊動板が動かないので, 受動板も動かない.

両方が1なら遊動板も動き, それに押されて右の棒も右に動き, 受動板も動いて出力が1になる.

ORは遊動板もないのでもっと簡単だ.



下の2個が制御板である. 上の左が能動板. 右が受動板である.

入力が共に0, 2本の棒が下にあると, 能動板が右に動いてもどちらの棒もそのままなので, 受動板は動かず, 出力も0である.

いずれかの入力が1なら(共に1でも), 少くても1本の棒が上にあがり, 能動板が右に動くと上にあがっている棒に押されて受動板が右に動く.

排他的論理和XORは一番面倒である.



下の制御板, 上左の能動板, 上右の受動板の他に中段に遊動板が2枚ある.

まずA=0, B=0の時. この図の構造で能動板が右に動く. すると上の遊動板は右に動くが, 右の棒の左に隙間があるので, 右の棒は動かない. 下の遊動板は左の棒の右に隙間があるので, これは動かず, 右の棒も動かない.

A=1, B=0の時に能動板が動くと, 上の遊動板は動かないが, 下の遊動板は動き, 下の遊動板の右の棒も動いて受動板が動く.

A=0, B=1の時の能動板が動くと, 上の遊動板が右に動き, それに従ってその右の棒も動くから受動板も動く.

A=1, B=1の時は, 上の遊動板は動かず, 下の遊動板は動くが, 右の棒の左の隙間のせいで右の棒は動かず, 受動板は動かない.

なかなかよく出来ている.

2015年10月27日火曜日

Zuseの計算機

Konrad Zuseはベルリン工科大学で, 電気工学や機械工学でなく土木を学んだが, 1930年代の学生時代にすでに計算機を作ることを考えていたといわれる.

Z1からZ4までのZuseの計算機は全く独特なもので, 特に1936年〜1938年に作られた全機械式のZ1に私は興味がある. すべて金属の板, 金属の棒のたぐいでできた浮動小数点の加算器, 制御装置, 記憶装置はまったくユニークであり, その構造を調べたくなるのは人情であろう. 1936年といえば, あのTuringの論文の出た年である.

しかしこのZ1は大戦中に連合軍の空襲で破壊され, Zuseが戦後に再構築したZ1が存在し, その写真をみることができる.

再構築の話はここに詳しい.

今回からしばらくZuseの計算機についてブログを書きたい.

アメリカのComputer History MuseumにZ1の一部の写真がある. その基本素子の構造は次のようだ.



3枚の金属製の板に穴が開いていて, その穴に棒が通っている. 金属板はこの図では下から制御板, 受動板, 能動板という名称だが, 板の重ねる順は別に問題ではない. 問題は板の動く方向である.

制御板はyと書いた奥方向に動き, 手前方向に戻る. 受動板と能動板はxと書いた右方向に動き, 左方向に戻る. それぞれ現在の位置が0の位置で, 動いた先が1の位置である.

制御板が図の位置にあるとき, 能動板が動くと, 棒の左側に穴が続いているので, 棒は押されることはなく, 従って受動板も動かない(0のまま).

制御板が奥方向に動いたとすると, 棒が奥方向へ押され, 受動板と能動板の穴の奥の方に移動する. ここで能動板が右に動くと, その辺の穴は左に余裕がないから, 棒も右に押され, 従って受動板も棒におされて右に動き, 1の位置に来る.

つまり制御板が0なら受動板も0, 制御板が1なら受動板も1という情報伝達ができる.

右に描いたのは電気的なリレーで, 下のコイルに電流が流れると, 上の回路が閉じ, 回路に電流が流れる. コイルの電流が切れると回路の電流も切れるのと同じなので, この基本素子はリレーだという人もいる. 電気的リレーは, 応答が瞬時だが, Zuseの素子では, 制御板より能動板が遅れて動くので, 出力の受動板の反応も遅れる.

さらに入力方向と出力方向は90度ずれていることにも注意しなければならない.

ところで受動板が出力を出したら能動板は戻ってよいかといえば, それは駄目で, 能動板が戻ると受動板も戻ってしまい, これは次の論理の入力になっているからまだしばらく止めておかなければならない.

入力の制御板はすでに自由である. という次第で, 入力が0(左側), 1(右側)で信号を伝える分解図が次である.

この図では下から制御板, 能動板, 受動板の順になっている.



Cycle 0. 初期状態 受動板も能動板も定位置(0の位置)にいる. 着目するのは制御板と能動板の間が広く, 制御板と能動板の縦の縁がずれていることだ.

Cycle 1. 右側は制御板が上って1を入力した. 左はそのまま. 右の図の棒は上側へ移動する. 制御板と能動板の間が狭く, 両板の縦の線はずれている.

Cycle 2. まん中の能動板が右へ動く. 右の図の棒は左へ移動し, 受動板も右へ移動する(1を出力) 制御板と能動板の間が狭く, 両板の縦の線は揃っている.

Cycle 3. 制御板が下へ戻る. 制御板と能動板の間が広く, 両板の縦の線は揃っている.

Cycle 0. 能動板が左へ戻り, 初期状態になる.

つまり, 制御板が動き, 能動板が動き, 制御板が戻り, 能動板が戻る という動作をくりかえす.

これで90度曲ったが, 1で入力した信号は2で出る, と同時に次の入力になるから, この4 clock の間に4回の論理演算が出来たことになる.



上のcycle 1の右と同様な絵が左上に見える. Cycle 1の特徴が見える. 下から来た縦長の制御板が上に移動して, 1を入力したところだ.

右上の素子は横向だがCycle 0の所である. 右下は制御板の能動板の間に隙間があるから, 制御板が戻った所でCycle 3である.

左下はCycle 2で能動板が動き, 受動板を動かし, 出力と同時に右上の素子に入力した.

この動画がここにある.

Zuseのこの素子は4クロックでフリップフロップを実現しているが, 60年程前にあったパラメトロンは3拍励振といって, I相の論理素子の出力をII相へ入れ, II相の出力をIII相に入れ, III相の出力をI相へ戻すという3クロックの論理回路を構成していた. 久し振りにそんなことを思い出した.

2015年9月25日金曜日

ARMのプログラム技法

ARMには除算命令がないので, 前のブログCalの時はdivmodという簡単な除算サブルーチンを用意した. 通常はライブラリの除算ルーチンが組込まれるらしいが, 私としては除算サブルーチンを書くのが趣味の内だ.

2008年10月28日のブログに書いた「個人用電卓」の除算もそうだが, 私は剰余を除数と符号を合せる除算が好きなので, 今回も当然そういう設計にした.

400を15で割ると, 商は26, 剰余は10になる. では-15で割るときはどうするか. 商は-27, 剰余は-5とするのである. 通常割切れるときは剰余は0だが, これは正なので, 負数, 例えば-15で割ったときにはそういう剰余はでない. 剰余は-15になる.

400割る-20は商が-21, 剰余が-20とする. -21× -20=420, それに剰余が-20だから, 被除数は400というわけだ.

引き放し除算の方法はこうだ. ARMのレジスタは32ビットだが, 4ビットだと思って書いた図が下だ.

左は55割る7, 右は47割る7.



行0. 被除数が二進法で置いてある. それを左へ1ビットシフトする.
行1. 被除数と行2にある除数の符号を較べる.
行2. 符号が同じなら被除数から除数を引き, 異なれば足す.
行3〜12. 被除数を左へ1ビットシフトする.
シフトする前の被除数と除数の符号が同じなら被除数から除数を引き, 被除数の最下位に1を置く. 異なれば足す.
行13. 右のレジスタを2倍して1を足す. 左のレジスタに剰余. 右のレジスタに商がえられる. 剰余と除数の符号が異なれば, 剰余に除数を足し, 商から1を引く.

これと同じことをARMで実行したのが下のプログラムである.

プログラム0


行00 .data ここからデータ領域という指示
行02〜04 テストデータ
行05 printfの書式
行08 ここから除算サブルーチン. 被除数は上位がr1, 下位がr0, 除数がr2にある.
行08,09 r1,r0を繋げて左シフト. r0+r0をr0に置き, addsでキャリーをcpsrに 置く. adcでそのキャリーを足しながらr1+r1をr3に置く. adcsなので オーバーフローがあればセットする.
行10 被除数の左端の2ビットが01, 10だとオーバーフローが起き, bvsでジャンプ.
行11 除数と被除数の符号を較べる.
行12,13 符号が同じなら被除数から除数を引く, 異なれば足す.
行14 その加減算の前後の被除数の符号を較べる. 変っていなければオーバーフロー.
行16 カウンタr4に30をセット.
行17,18 被除数を1ビット左シフト.
行19 符号を較べる.
行20〜22 同じなら除数を引き, r0に1を足す. 異なれば足す.
行23,24 カウンタを減らす.
行25,26 補正
行27〜29 補正
行30 サブルーチンから帰る.
行31〜33 オーバーフローのとき, 除数が正なら-1, 負なら0を持って帰る.

プログラム1


これはドライバのプログラム.

クルティカルな例を実行したのがこれだ.

被除数            除数     商       剰余
3fffffff 7fffffff 7fffffff 7fffffff 7ffffffe
c0000000 80000000 7fffffff 80000000        0
c0000000 7fffffff 80000000 7fffffff ffffffff
3fffffff 80000000 80000000 80000000 80000000
Schemeで検算してみる.
(number->string
(+ (* #x7fffffff #x7fffffff) #x7ffffffe) 16)
=> 3fffffff7fffffff

(number->string
(* #x7fffffff #x-80000000) 16)
=> -3fffffff80000000 (= c000000080000000)

(number->string
(+ (* #x-80000000 #x7fffffff) -1) 16)
=> -3fffffff80000001 (= c00000007fffffff)

(number->string
(+ (* #x-80000000 #x-80000000) #x-80000000) 16)
=> 3fffffff80000000
うまくいっているようだ.

2015年9月16日水曜日

ARMのプログラム技法

数日前のブログではARMのアセンブリ言語でカレンダーのプログラムcalを書いてみた. 今回はおなじラズパイで動くBCPLで同様のプログラムを書こう. (ARMのプログラム技法という題は多少おかしいが.)

BCPLはMartin Richardsが1967年頃に設計した言語である. その元はケンブリッジ大学とロンドン大学がコンパイラ記述用に開発したCPLで, Combined Programming Languageの略である. そのBasic版がBCPLということになっている. またBCPLからC言語が生まれたこともよく知られている.

BCPLをケンブリッジで開発した後, Martin RichardsはMITのProject MACに滞在したので, MITでもBCPLは使えるようになった. 私がBCPLに出逢ったのは1973年から1年MITにいた時であった.

BCPLは最初の設計から50年近く経ったが, まだ保守されているのに驚く.

下のcal.bはBCPLでcalを書いたリストである.



ARMのcalとほとんど同じに出来ているので, それを読む注釈と思って眺めて欲しい. 00行目 C言語のinclude のようなものだ.
02行目 C言語のmain()のようなものだ. ただVALOF { ... RESULTIS ..} の形に なっている.
03行目 変数yearとmonthを定義. BCPLには型がない. 初期値もこう書く流儀らしい.
04行目 他の変数も定義
05,06行目 配列の定義 VEC 11で0から11まで12個の場所が取れる. 初期値の設定は 別にやるらしい. 14行目から18行目で設定した.
08行目から13行目 yearとmonthを引数から取り込むにはこう書くらしい.
19行目 Gregorio暦では週日は400年で繰り返すから, 西暦を400で割った剰余r400だけ を考えることにする.
21行目まで r400を100, 4で割った商と剰余を求める.
22行目 r100≠0をBCPLではr100¬=0と書いたりするが, ASCIIには¬がなく, ~=0でもいいようだ.
23行目 閏年ならrsの1月と2月, msの2月の値を修正する.
24行目 aはその月の1日の週日. nは1週間を数える変数である.
25行目 1日のある週の最初から6週目の最後までFOR分で繰り返す.
26〜28行目 1日から月末までの日なら出力する. それ以外なら空白を出力.
29,30行目 nを下げ0になったら改行する.
31行目 0を持って帰る.

これを実行するには, raspberrypi:~$でcintsysに入る

0.030> bcpl cal.b to cal
bcpl cal.b to cal

BCPL (10 Oct 2014) with simple floating point
Code size =   436 bytes of 32-bit little ender Cintcode
0.110> cal 2015 9
cal 2015 9
        1  2  3  4  5
  6  7  8  9 10 11 12
 13 14 15 16 17 18 19
 20 21 22 23 24 25 26
 27 28 29 30

0.020> cal 2015 10
cal 2015 10
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とまぁこんな具合に動く.