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2011年8月27日土曜日

3シリンダ機関車

ずいぶん前のこのブログに3シリンダ機関車のことを書いた. そこで引用しているURLが, 最近なくなっているのに気づいたので, もう一度3シリンダ機関車の弁装置について書くことにする.

今でも蒸気機関車は人気があり, 各地で復活されているが, その構造はあまり理解されていないに違いない.

簡単にいってしまえば, 機関車の左右の前方につけた2個のシリンダ(気筒)の中にピストンを入れ, ピストンの両側から交互に蒸気を補給してピストンを前後に動かす. ピストンの往復運動を主連棒で繋ぎ, 動輪を回転して機関車を進める. ピストンがどちらかの端に寄っていると, 蒸気の補給が出来ず, 死点といって力が出せないが, 反対側のピストンが最も力の出る中央にいるように, 左右のピストンの位相を90度づらせて配置してある. このことは, 鉄道博物館で実物の機関車を見ると確認出来る.

ピストンの前後に交互に蒸気の補給をしているのが, シリンダと並んだ蒸気室で, その中に滑り弁があり, これが蒸気室の中を前後に滑りながら, 蒸気をピストンの一方に送り込む.

Walschaertの走り装置の図はここにあるので参照されたい.

滑り弁は, 動輪に動力を伝える主連棒と90度づれたエキセン棒から, 逆転装置を経由した弁棒で押し引きされて運動する. この辺の装置は大変に込み入っているから, 説明は省略!

ところで, 表題の3シリンダ機関車は, 2つのシリンダでは力不足の時, 第3のシリンダを両シリンダの中央に搭載し, 合わせて3本の主連棒で動輪を駆動する方式である. 動輪軸の中央はクランク状になっていて, そこに中央の主連棒が接続されている.

問題は, 左右の動輪のエキセン棒のようなものが, 中央のクランクからも出ているかということだが, そういう複雑な走り装置にはなっておらず, 中央のシリンダの弁の制御は両側の弁の制御から構成していたというのが前回のブログであった.

下の図を見て欲しい. Cylinder AとCylinder Bと書いたのが, 両端のシリンダの蒸気室で, 左(機関車の後方)から弁棒が入り, 途中に滑り弁があり, 弁棒の延長が右方に突き出している. 機関車の先頭にAOD, BDCのような梃子があり, 支点AはCylinder Aの弁棒の先に, 支点BはCylinder Bの弁棒の先に固定されている. 梃子だから, 図で左右に揺れると支点の上下移動もあるはずだが, 今は各支点は左右にだけ動くとしている.

支点Oは固定点である. またOD=OA/2, つまりAが動くとDはAの半分の振幅で逆位相に動く. そのDを支点として, DB=DCの梃子があり, CがCylinder Cの弁棒になっている. そうすると, CはAとBが120度の位相差で動くと, さらに120度の位相差で動き, 3番目の滑り弁が望み通りに動くのである.

このアニメーションがここにある.

アニメの下でくるくる回る3芒星は, 120度の位相で回転することを示す.

2008年3月12日水曜日

3シリンダ機関車

前回書いた3シリンダ機関車の中央シリンダの制御シャフトの続きで, リンク機構はベクトルで考えると明瞭なことが分かった.

120度づつ離れたベクトル a, b, cがある. aに2 to 1 leverを接続すると, 相手の端は逆向きで大きさが半分のベクトル a'になる. これはちょうどbとcの中間なので, a'を中心にしたbの動きはちょうとcになるわけだ.

2008年3月8日土曜日

3シリンダ機関車

時間があったので鉄道博物館へいった. いつも何か発見があり楽しい.

国産の3シリンダ機関車C53の走り装置が置いてあった. 3シリンダ機関車は, 両側のシリンダは普通の蒸気機関車のとそっくりだが, 外から見えない台車の中央に3つめのシリンダーがある.

その中央のシリンダからはクランク軸になっている動輪に力を伝達する. 問題は中央の制御シャフトがどうなっているかであるが, 実に意外な構造であった. 両側の滑り弁を動かす制御シャフトが機関車の先頭の方へ突き抜け, それをリンクでつないで中央の制御シャフトを動かすのであった.

googleで探したら,
http://www.watercressline.co.uk/tw/pics/bitn2to1.jpg
にその図解があった.

こういう計算をしてみた. 一方の制御シャフトの動きをa, 他方のそれをb, 中央のそれをcとする.

a=sin x
b=sin (x+2π/3) = sin x cos 2π/3 + cos x sin 2π/3=-1/2 sinx + √3/2 cos x
c=sin (x+4π/3) = sin x cos 4π/3 + cos x sin 4π/3=-1/2 sinx - √3/2 cos x

これを眺めると a + b = -c とわかる.

たしかにベンツのマークのような, 120度ずつはなれたベクトルをa, b, cとすると, a+bはcと反対向きのベクトルになるから, 納得できる.

さて上の図解によると, 下のvalve spindle linkの動きをfulcrum pinを中心にして2 to 1 leverで上へ伝達する. その点を中心として, 上のvalve spindle linkの動きをequal leverで中央のvalve spindle linkへ伝えている.

従って, 下の動きをaとすると, 2 to 1 leverの上の動きは -1/2 aになる. 上の動きをb, 中央の動きを x とすると, bとxの平均が-1/2 aなのだから (x + b)/2 = -1/2 a. したがって x = - (a + b)となり, ちょうどcの動きとなっている.

すばらしい.