1月ほど前, 新聞の出版広告を見ていたら, 思いがけず「森岡美子著 萬葉集物語」が復刊されたとあった.
実はこの本は, 私が小学生の頃, 繰り返し読んだ思い出深い書物である. その頃の本は, 家が空襲で焼けた時, 一緒に焼けてしまったはずだ.
しかし本書を読んだお蔭で, 萬葉集に対する興味が深まり, 多くの和歌や少なからぬ長歌も諳じた.
ところで左様な昔の本が, 2/3世紀もたった今頃, 復刊されたのは, 驚きである. 実は私の読んだ本とは別に, 多少の手直しを経て, 戦後の昭和27年に冨山房から新たに刊行されていたらしい. 今回復刊されたのは, それであった. 早速求めて読み直したのはいうまでもない.
私が愛した本は, ところどころに色刷りのページがあり, そこには「あおによし」「田子の浦に」など有名な和歌が万葉かなで書いてあった. それが冨山房版にはなかった.
この本は, 言葉使いが大変ていねいである. 「みなさまは, どうお考えになりますか」という調子である. 私は地の文の文体までは覚えていなかったが, こうい調子の本であったらしい.
小学生のころ, 著者が森岡美子という方だとは知っていたが, 女子学習院で教鞭をとられていたことは, 今回知った. そして90歳を超されてご健在であった.
考えてみると, 昔の先生は言葉が一般にていねいだったようにも思う. 私が中学1年の時, 「みなさまが将来論文をお書きになるなら」という先生もいらして, われわれも大人になったのだと実感した.
それはとにかく, 昔の優れた本が, 復刊されるのは, 嬉しいことである.
