2015年10月27日火曜日

Zuseの計算機

Konrad Zuseはベルリン工科大学で, 電気工学や機械工学でなく土木を学んだが, 1930年代の学生時代にすでに計算機を作ることを考えていたといわれる.

Z1からZ4までのZuseの計算機は全く独特なもので, 特に1936年〜1938年に作られた全機械式のZ1に私は興味がある. すべて金属の板, 金属の棒のたぐいでできた浮動小数点の加算器, 制御装置, 記憶装置はまったくユニークであり, その構造を調べたくなるのは人情であろう. 1936年といえば, あのTuringの論文の出た年である.

しかしこのZ1は大戦中に連合軍の空襲で破壊され, Zuseが戦後に再構築したZ1が存在し, その写真をみることができる.

再構築の話はここに詳しい.

今回からしばらくZuseの計算機についてブログを書きたい.

アメリカのComputer History MuseumにZ1の一部の写真がある. その基本素子の構造は次のようだ.



3枚の金属製の板に穴が開いていて, その穴に棒が通っている. 金属板はこの図では下から制御板, 受動板, 能動板という名称だが, 板の重ねる順は別に問題ではない. 問題は板の動く方向である.

制御板はyと書いた奥方向に動き, 手前方向に戻る. 受動板と能動板はxと書いた右方向に動き, 左方向に戻る. それぞれ現在の位置が0の位置で, 動いた先が1の位置である.

制御板が図の位置にあるとき, 能動板が動くと, 棒の左側に穴が続いているので, 棒は押されることはなく, 従って受動板も動かない(0のまま).

制御板が奥方向に動いたとすると, 棒が奥方向へ押され, 受動板と能動板の穴の奥の方に移動する. ここで能動板が右に動くと, その辺の穴は左に余裕がないから, 棒も右に押され, 従って受動板も棒におされて右に動き, 1の位置に来る.

つまり制御板が0なら受動板も0, 制御板が1なら受動板も1という情報伝達ができる.

右に描いたのは電気的なリレーで, 下のコイルに電流が流れると, 上の回路が閉じ, 回路に電流が流れる. コイルの電流が切れると回路の電流も切れるのと同じなので, この基本素子はリレーだという人もいる. 電気的リレーは, 応答が瞬時だが, Zuseの素子では, 制御板より能動板が遅れて動くので, 出力の受動板の反応も遅れる.

さらに入力方向と出力方向は90度ずれていることにも注意しなければならない.

ところで受動板が出力を出したら能動板は戻ってよいかといえば, それは駄目で, 能動板が戻ると受動板も戻ってしまい, これは次の論理の入力になっているからまだしばらく止めておかなければならない.

入力の制御板はすでに自由である. という次第で, 入力が0(左側), 1(右側)で信号を伝える分解図が次である.

この図では下から制御板, 能動板, 受動板の順になっている.



Cycle 0. 初期状態 受動板も能動板も定位置(0の位置)にいる. 着目するのは制御板と能動板の間が広く, 制御板と能動板の縦の縁がずれていることだ.

Cycle 1. 右側は制御板が上って1を入力した. 左はそのまま. 右の図の棒は上側へ移動する. 制御板と能動板の間が狭く, 両板の縦の線はずれている.

Cycle 2. まん中の能動板が右へ動く. 右の図の棒は左へ移動し, 受動板も右へ移動する(1を出力) 制御板と能動板の間が狭く, 両板の縦の線は揃っている.

Cycle 3. 制御板が下へ戻る. 制御板と能動板の間が広く, 両板の縦の線は揃っている.

Cycle 0. 能動板が左へ戻り, 初期状態になる.

つまり, 制御板が動き, 能動板が動き, 制御板が戻り, 能動板が戻る という動作をくりかえす.

これで90度曲ったが, 1で入力した信号は2で出る, と同時に次の入力になるから, この4 clock の間に4回の論理演算が出来たことになる.



上のcycle 1の右と同様な絵が左上に見える. Cycle 1の特徴が見える. 下から来た縦長の制御板が上に移動して, 1を入力したところだ.

右上の素子は横向だがCycle 0の所である. 右下は制御板の能動板の間に隙間があるから, 制御板が戻った所でCycle 3である.

左下はCycle 2で能動板が動き, 受動板を動かし, 出力と同時に右上の素子に入力した.

この動画がここにある.

Zuseのこの素子は4クロックでフリップフロップを実現しているが, 60年程前にあったパラメトロンは3拍励振といって, I相の論理素子の出力をII相へ入れ, II相の出力をIII相に入れ, III相の出力をI相へ戻すという3クロックの論理回路を構成していた. 久し振りにそんなことを思い出した.

2015年9月25日金曜日

ARMのプログラム技法

ARMには除算命令がないので, 前のブログCalの時はdivmodという簡単な除算サブルーチンを用意した. 通常はライブラリの除算ルーチンが組込まれるらしいが, 私としては除算サブルーチンを書くのが趣味の内だ.

2008年10月28日のブログに書いた「個人用電卓」の除算もそうだが, 私は剰余を除数と符号を合せる除算が好きなので, 今回も当然そういう設計にした.

400を15で割ると, 商は26, 剰余は10になる. では-15で割るときはどうするか. 商は-27, 剰余は-5とするのである. 通常割切れるときは剰余は0だが, これは正なので, 負数, 例えば-15で割ったときにはそういう剰余はでない. 剰余は-15になる.

400割る-20は商が-21, 剰余が-20とする. -21× -20=420, それに剰余が-20だから, 被除数は400というわけだ.

引き放し除算の方法はこうだ. ARMのレジスタは32ビットだが, 4ビットだと思って書いた図が下だ.

左は55割る7, 右は47割る7.



行0. 被除数が二進法で置いてある. それを左へ1ビットシフトする.
行1. 被除数と行2にある除数の符号を較べる.
行2. 符号が同じなら被除数から除数を引き, 異なれば足す.
行3〜12. 被除数を左へ1ビットシフトする.
シフトする前の被除数と除数の符号が同じなら被除数から除数を引き, 被除数の最下位に1を置く. 異なれば足す.
行13. 右のレジスタを2倍して1を足す. 左のレジスタに剰余. 右のレジスタに商がえられる. 剰余と除数の符号が異なれば, 剰余に除数を足し, 商から1を引く.

これと同じことをARMで実行したのが下のプログラムである.

プログラム0


行00 .data ここからデータ領域という指示
行02〜04 テストデータ
行05 printfの書式
行08 ここから除算サブルーチン. 被除数は上位がr1, 下位がr0, 除数がr2にある.
行08,09 r1,r0を繋げて左シフト. r0+r0をr0に置き, addsでキャリーをcpsrに 置く. adcでそのキャリーを足しながらr1+r1をr3に置く. adcsなので オーバーフローがあればセットする.
行10 被除数の左端の2ビットが01, 10だとオーバーフローが起き, bvsでジャンプ.
行11 除数と被除数の符号を較べる.
行12,13 符号が同じなら被除数から除数を引く, 異なれば足す.
行14 その加減算の前後の被除数の符号を較べる. 変っていなければオーバーフロー.
行16 カウンタr4に30をセット.
行17,18 被除数を1ビット左シフト.
行19 符号を較べる.
行20〜22 同じなら除数を引き, r0に1を足す. 異なれば足す.
行23,24 カウンタを減らす.
行25,26 補正
行27〜29 補正
行30 サブルーチンから帰る.
行31〜33 オーバーフローのとき, 除数が正なら-1, 負なら0を持って帰る.

プログラム1


これはドライバのプログラム.

クルティカルな例を実行したのがこれだ.

被除数            除数     商       剰余
3fffffff 7fffffff 7fffffff 7fffffff 7ffffffe
c0000000 80000000 7fffffff 80000000        0
c0000000 7fffffff 80000000 7fffffff ffffffff
3fffffff 80000000 80000000 80000000 80000000
Schemeで検算してみる.
(number->string
(+ (* #x7fffffff #x7fffffff) #x7ffffffe) 16)
=> 3fffffff7fffffff

(number->string
(* #x7fffffff #x-80000000) 16)
=> -3fffffff80000000 (= c000000080000000)

(number->string
(+ (* #x-80000000 #x7fffffff) -1) 16)
=> -3fffffff80000001 (= c00000007fffffff)

(number->string
(+ (* #x-80000000 #x-80000000) #x-80000000) 16)
=> 3fffffff80000000
うまくいっているようだ.

2015年9月16日水曜日

ARMのプログラム技法

数日前のブログではARMのアセンブリ言語でカレンダーのプログラムcalを書いてみた. 今回はおなじラズパイで動くBCPLで同様のプログラムを書こう. (ARMのプログラム技法という題は多少おかしいが.)

BCPLはMartin Richardsが1967年頃に設計した言語である. その元はケンブリッジ大学とロンドン大学がコンパイラ記述用に開発したCPLで, Combined Programming Languageの略である. そのBasic版がBCPLということになっている. またBCPLからC言語が生まれたこともよく知られている.

BCPLをケンブリッジで開発した後, Martin RichardsはMITのProject MACに滞在したので, MITでもBCPLは使えるようになった. 私がBCPLに出逢ったのは1973年から1年MITにいた時であった.

BCPLは最初の設計から50年近く経ったが, まだ保守されているのに驚く.

下のcal.bはBCPLでcalを書いたリストである.



ARMのcalとほとんど同じに出来ているので, それを読む注釈と思って眺めて欲しい. 00行目 C言語のinclude のようなものだ.
02行目 C言語のmain()のようなものだ. ただVALOF { ... RESULTIS ..} の形に なっている.
03行目 変数yearとmonthを定義. BCPLには型がない. 初期値もこう書く流儀らしい.
04行目 他の変数も定義
05,06行目 配列の定義 VEC 11で0から11まで12個の場所が取れる. 初期値の設定は 別にやるらしい. 14行目から18行目で設定した.
08行目から13行目 yearとmonthを引数から取り込むにはこう書くらしい.
19行目 Gregorio暦では週日は400年で繰り返すから, 西暦を400で割った剰余r400だけ を考えることにする.
21行目まで r400を100, 4で割った商と剰余を求める.
22行目 r100≠0をBCPLではr100¬=0と書いたりするが, ASCIIには¬がなく, ~=0でもいいようだ.
23行目 閏年ならrsの1月と2月, msの2月の値を修正する.
24行目 aはその月の1日の週日. nは1週間を数える変数である.
25行目 1日のある週の最初から6週目の最後までFOR分で繰り返す.
26〜28行目 1日から月末までの日なら出力する. それ以外なら空白を出力.
29,30行目 nを下げ0になったら改行する.
31行目 0を持って帰る.

これを実行するには, raspberrypi:~$でcintsysに入る

0.030> bcpl cal.b to cal
bcpl cal.b to cal

BCPL (10 Oct 2014) with simple floating point
Code size =   436 bytes of 32-bit little ender Cintcode
0.110> cal 2015 9
cal 2015 9
        1  2  3  4  5
  6  7  8  9 10 11 12
 13 14 15 16 17 18 19
 20 21 22 23 24 25 26
 27 28 29 30

0.020> cal 2015 10
cal 2015 10
              1  2  3
  4  5  6  7  8  9 10
 11 12 13 14 15 16 17
 18 19 20 21 22 23 24
 25 26 27 28 29 30 31

0.020> 
とまぁこんな具合に動く.

2015年9月10日木曜日

ARMのプログラム技法

前回のブログでCalのプログラムの核心の部分がうまく書けることが分かったので, 全体を書いてみた. やや長いが興味があれば追ってみて欲しい.

プログラム0


行00 .data ここからデータ領域という指示
行01,02 年と月を格納する場所 4バイトずつ
行03 1月から順に次の年初の曜日とその月の1日の曜日の差 12月は31日なので 4週と3日余るが, -3mod7=4のような値のリスト. 以下rsという
行04 各月の長さ. 以下msという
行05〜09 scanf, printfの書式
行10 プログラム部分の開始
行11〜17 除算サブルーチン r0をr1で割り商をr0, 剰余をr1に置く

プログラム1


行19 主ルーチンの入り口, 帰り番地をr8へ退避する
行20 yearを入れる場所をr1へ
行21 monthを入れる場所をr2へ
行22 scanfの書式の番地をr0へ
行23 scanfを呼ぶ
行24 データ領域のベースアドレスをr3へ
行25 yearをr0へ
行26 400をr1へ
行27 除算
行28 400で割った剰余R400をr4へ
以下 R400を100と4で割った商と剰余を求める
行38 100で割った剰余を0と比較
それが0か否かにより, 400と4との剰余をr1に置く(条件つきmov)
行41 r1が0なら閏年(閏年の判定には100で割った剰余R100が0なら400で割った剰余R400が0, 0でないなら4で割った剰余R4が0かで判定できる)

プログラム2


行42〜47 r1=0なら閏年なので, rsの1月2月とmsの2月を修正する
行48〜58 その月の1日の週日(a)は(1+R400-Q100+Q4+rs[月])mod 7
行59 前回のブログのr5の値, 1-a
行60 前回のブログの#6に相当する値, 43-a
行62 前回のブログの#3に相当する値, その月の日数

プログラム3


出力用の値が設定できたので出力に移る.
行63,64 曜日の名を出力
行65 r4は1週間を数えるカウンタ
行66 日付が1より大きいか
行67 そうなら最後の日付より小さいか
行68 日付をr1に置く
行69,70 比較の結果でいづれかの書式をr0に置く
行72 日付を1増やす
行73 週のカウンタを減らす
行74〜76 1週間が終わったら改行しカウンタをリセット
行77,78 最後になっていなければl0へ戻る
行79 lrを戻す
行80,81 プログラムの戻り値を入れて終わる
行82〜87 定数の番地

このプログラムでは, データの場所にはラベルがあるが, プログラムの部分には殆どラベルが見られない. divmodはサブルーチンの入り口, mainはプログラム全体の入り口, あとカレンダー出力のループのl0があるだけである. 従ってジャンプ命令もほとんどない. そういうことではARMのアーキテクチャは気持ちがいいといえる.

このプログラムをRaspberry Piで動かすには,
as -o cal.o cal.s
gcc -o cal cal.o
./cal
で起動し
2015 9
のように年と月を入力すると
./cal
2015 9
 Su Mo Tu We Th Fr Sa
        1  2  3  4  5
  6  7  8  9 10 11 12
 13 14 15 16 17 18 19
 20 21 22 23 24 25 26
 27 28 29 30

とカレンダーが得られる.

このプログラムはhttp://www.iijlab.net/~ew/cal.sに置いてある.

2015年9月8日火曜日

ARMのプログラム技法

1ヶ月ほど前のブログで「数式お絵書き」を書いたのは, 手元のRaspberry PiでMathematicaが動いていたからだ.

Mathematicaも面白いが, Raspberry PiはそのCPUがARMなので, アセンブリ言語でプログラムを書くと, ARMのアーキテクチャがよく分るではないかと, 最近ではもっぱらアセンブリ言語のプログラムを書いている.

「ARM」という単語を最初に聞いたのは, 1995年頃の英国ケンブリッジでであったと思う. ケンブリッジ大学の計算機研究所のWilkes先生を訪ねたのだが, もう大学にもオリベッティの研究所にも出勤されてはいなかったので, オリベッティ研究所の所長のAndy Hopperさんに会って雑談している時, ARMといういいCPUがあるよと言われた. (この訪問のことは, bit 1996年1月号のaleph zeroに書いた.)

昨年8月, 偶然みつけたウェブページのことをツィッターに書いた.
50年ほど前にBCPLを開発したMartin Richardsが「青少年のためのRaspberry Pi上のBCPLプログラミング入門」を書いている(http://goo.gl/rXOKy2 ). 1つの言語に半世紀も情熱を持ち続けるとは見上げたもの. そのうち読んでみたい.
(「青少年のための...入門」と書いたのは, 元の題が「Young Persons Guide to BCPL Programming on the Raspberry Pi」であり, Benjamin Brittenの曲「The Young Person's Guide to the Orchestra」が日本では「青少年のための管弦楽入門」といわれているからだ.)

このツィートの後, 研究所でRaspberry Piを何個か購入し, 使えるようになってきた. またARMそのものにも興味も出てきた.



ARMでプログラムを書くに際して, 最低限の知識は次のようだ.

ArmはRiscだが, 命令幅が32ビットで, 水平型マイクロプログラムの様相を持つ. 16ビット命令のモードもある.

記憶装置とのデータ転送はldr, strだけ.

CMPがCPSR(Current Program Status Register, NZCVビット)をセットするほか, 加減乗算命令でも, addsのようにsを付けてCPSRをセットできる.

命令には, eq, ne, pl, miなど条件を付け, 実行するしないが指定できる.

このようなことを念頭に置いてプログラムを書く. その前後に指定された個数の空白を置き, aからbまでの数字を順に出力するにはどうするか. これはカレンダーのプログラムを書くときに必要になる. 例えば今年の9月のカレンダーは, cal 9 2015 で見ると
% cal 9 2015
   September 2015
Su Mo Tu We Th Fr Sa
       1  2  3  4  5
 6  7  8  9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30

なら, 先頭に2個の空白と最後に3個の空白を置き, 1から30まで印字するプログラムを書けばよい. いきなりプログラムではなく, テストプログラムとしては, 例えば前に3個, 後に2個の空白を置き, 1から3まで出力するプログラムは普通ならこうなろう.
(do ((i 0 (+ i 1))) ((= i 3)) (display "   "))
(do ((i 1 (+ i 1))) ((> i 3)) (display i))
(do ((i 0 (+ i 1))) ((= i 2)) (display "   "))
ARMの機能を活用するとこうなる.
.data
        .balign 4      /*4バイト境界を合わせる*/
a:      .word -2       /*出力する整数の初期値 2*/
ret:    .word 0        /*帰り番地の退避場所*/
s0:     .asciz ". *"   /*printfの書式*/
s1:     .asciz ".%2d"
s2:     .asciz "\n"
.text
        .balign 4
.global main
main:   ldr r0,reta    /*帰り番地を一時退避*/
        str lr,[r0]
        ldr r0,aa
        ldr r5,[r0]    /*出力する整数をr5へ*/
l0:     cmp r5,#1      /*出力する最初の数a*/
        rsbgts r0,r5,#3/*出力する最後の数b*/
        mov r1,r5      /*出力する数をr1へ*/
        ldrpl r0,s1a   /*書式0を使う*/
        ldrmi r0,s0a   /*書式1を使う*/
        bl printf      /*printfで出力*/
        add r5,r5,#1
 cmp r5,#6      /*終りの空白が済んだときのr5の値*/
 bmi l0
 ldr r0,s2a
 bl printf      /*書式2で改行を出力*/
 mov r0,#1      /*プログラムの返り値*/
        ldr r1,reta
        ldr lr,[r1]    /*帰り番地を復活*/
        bx lr

aa:     .word a
s0a:    .word s0
s1a:    .word s1
s2a:    .word s2
reta:   .word ret
想定通りの出力が得られる. (空白の様子が分かるように.や*が入っている.)
. *. *. *. 1. 2. 3. *. *
上のプログラムのミソは
l0:     cmp r5,#1      /*出力する最初の数a*/
        rsbgts r0,r5,#3/*出力する最後の数b*/
        mov r1,r5      /*出力する数をr1へ*/
        ldrpl r0,s1a   /*書式0を使う*/
        ldrmi r0,s0a   /*書式1を使う*/
        bl printf      /*printfで出力*/
        add r5,r5,#1
 cmp r5,#6
 bmi l0
のところだ. ラベルがl0:の行ではr5と1を比較, つまりr5から1を引く. r5が-2から0までは結果は負である. 次の行はこの結果が>0ならrsbつまり逆減算で, 3からr5を引き, 最後のsで結果をCPSRに置く. r5が3を超えると負になるわけだ.

次の行でr5を出力パラメータとしてr1へ置き, 前の計算の正負に従って書式をr0に置き, printfを呼ぶ.

r5は最後の数3を超えても増え続け, つまり空白を出力し続け, 6になるとcmpの結果が負ではなくなり, ループから抜ける.

要するに初めの空白部は, r5との比較が負で判定し, 終りの空白はr5と3を逆に引くことで, 範囲外をともに負にしている.

こんなことが出来るのはARMの命令が多様だからであった.

2015年8月16日日曜日

数式お絵描き

前回のブログでこうもりの描き方がすっかり分ったかといえば, まだすっきりしない部分がある. 下の線を描くプログラムの11から15行目が思いのほか複雑なのだ.

この式の構造はこうなっている. 11行目の(1/2)*に掛けられる因子は4つの項で出来ている.
3*Sqrt[1-(x/7)^2]            (楕円)
+Sqrt[1-(Abs[Abs[x]-2]-1)^2] (4つの小楕円)
+Abs[x/2]                    (折線)
-((3*Sqrt[33]-7)/112)*x^2    (放物線)
-3
最初はお馴染の楕円で高さは3にしてある. 次が4個の楕円で高さはどれも1だ. その次が(0,0)で折り返す直線で, 最後がx2の抛物線である.



4個の楕円はx=-4,-2,0,2,4の5個所でy=0である. このうち中央のx=0では, 他の項の楕円の3を足し, 最後の3を引き, 折線と放物線はx=0で0だから, 0のままである.

x=4では楕円は3√33/7, 折線は2, 放物線は16*(3√33-7)/112, それから3を引くが, これは計算すると結局0になる.

x=2のところは面倒になったので, Schemeで計算した.
(define (a x)
 (define (sq x) (* x x))
 (+ (* 3 (sqrt (- 1 (sq (/ x 7)))))
    (abs (/ x 2))
    (- (* (/ (- (* 3 (sqrt 33)) 7) 112) (sq x)))
    (- 3)))

(a 2) => .5094556875135123
(a 3) => .3881737849967646
(a 1) => .3778577420858067
という次第で, 0,±4では0, ±2では0.5くらいになる. 1と3では1.37程度になろうか.



この図を見ると高さの値は微妙に違うようだが, まぁいいか. この図では±4の外側では定義されていないということで, 青線がないが, 前回のフィルタを掛けた下の図では

のように外側の方もよくみるとx軸上に青の線が見える. 高さも2倍になっているのが分かる. これから楕円の下半分を引くと, 思ったとおりの下の曲線が出来る.

ところでこの下の図は, 前回のこうもりの絵とはすこし違っている. 最後のAspectRatio->Automaticをつけなかったのである.



AspectRatioの詳細はまだわからないが, Plot関数では, AspectRatio->Automatic がないと縦横比が黄金比のφになるらしい.

ディスプレイ上で測ってみると, 左右は56ミリ, 上下は33ミリであった.
(/ 56. 33) => 1.696969696969697
確かに黄金比に近いといえなくはない. x軸の0から2と, y軸の0から2の長さは明らかに違う. Automaticを指定した前回のこうもりの絵では, 横:縦は正しく7:3になっている.

黄金比にするような見栄えを工夫するのがAutomaticの機能のように思うのだが, Mathematicaの文化はこういうものか. 前回のSinの図でも, Automaticがないので, 横/縦は1.7くらい. Automaticを追加すると, 縦と横の長さは1:1になり, もっと平べったい, 正確になった. (世の中のSinカーブでは, 前回の図も含めてx=0での勾配が1になっていない図がかなり多い.)

2015年8月5日水曜日

数式お絵描き

Raspberry PiでMathematicaが使えるのはうれしい.

そのアナウンスにこうもりのような絵があった. もちろんMathematicaのPlot関数で描いたものだ.



その描画プログラムも添えてあったので, Mathematica屋の絵を描く方法が分るのではないかと期待してプログラムを解読した. とりあえずは目がくらくらするが,

である.

そもそもMathematicaで標準関数の絵を描くのは簡単だ. "Plot["と書き, 描くべき式を書き, ","で区切り, "{x,-Pi,Pi}"のように変数の範囲を書き, "]"で閉じる.
Plot[Sin[x],{x,-Pi,Pi}]


こうもりの絵のようなのは, 上の線と下の線を{,}で囲み区切ればよい.

Plot[{Sin[x],Cos[x]},{x,-Pi,Pi}]


こうもりプログラムでは, 1行目の"With"から10行目の"]]"までが上の曲線, 11行目から15行目の"2]"までが下の曲線である.

上の曲線のプログラムは"With[{"から w(3行目), l(2,3行目), h(4,5,6行目), r(7,8行目)を局所定義し(8行目の"},"で終る), それらを使い9,10行目の本体で描画する.

w(3*Sqrt[1-(x/7)^2])はこういう曲線だ.

これは要するに長軸(半径)7, 短軸1のx2/49+y2=1なる楕円の, 平方根は正をとるからその上半分を描いたわけである. あとから縦軸を3倍した.

次はl.(6/7)*Sqrt[10]+(3+x)/2-(3/7)*Sqrt[10]*Sqrt[4-(x+1)^2] のような形だ. 下に左右反対のrがある. xで変る項は(3+x)2とSqrt[4-(x+1)^2]で, 前者は斜線, 後者は例によって楕円である.

大きさを合せて合成するとこうなる. 上の図の斜線はxの範囲-7から7まであるが, 下の図では引くべき楕円が定義されている範囲が-3から1までなので, その外の 線は消えている.



4行目のhはこうもりの耳のところで, ( (1/2)*(3*(Abs[x-1/2]+Abs[x+1/2]+6)-11*(Abs[x-3/4]+Abs[x+3/4])))といろいろの斜線を組合せているに過ぎない.

ここまで準備したところで, 上の曲線は-7から-3,-3から-1,-1から1,1から3,3から7の区間をUnitStepで接続する. UnitStep[x]はx<0では0, 0≤xでは1になる関数で, UnitStep[x+3]とすると, -3から右が1になる.

w+(l-w)*UnitStep[x+3]+(h-l)*UnitStep[x+1]+(r-h)*UnitStep[x-1]+ (w-r)*UnitStep[x-3]]

x=-7では4個のどのUnitStepも0だから最初の項wで描きだす. x=-3になるとUnitStep[x+3]が1になり, それに(l-w)が掛るから, wが消えlの曲線を描き始める. x=-1 でlが終りhが始まる. x=1でrに, x=3で(w-r)があるので, rも終り, wが復活して最後を描く.


下の線もなかなか凝っているが, 全体的には上と同じ楕円に, 4個の楕円が組み合わさっている構造だ.
ここで一番主要な線はSqrt[1-(Abs[Abs[x]-2]-1)^2]だ.



すぐ上の図は左からAbs[x], Abs[x]-2, Abs[Abs[x]-2], Abs[Abs[x]-2]-1で, ここでそれぞれの斜線部分に対応して例の楕円が4個できる仕掛けである.



UnitStepの代わりにこちらではバンド幅フィルタのような関数でこの4個の楕円を取り出している. それが((x+4)/Abs[x+4]-(x-4)/Abs[x-4])で, 左がx<-4で-1, -4<xで1, 右がx<4で-1, 4<xで1だから, 結局x<-4で0, -4<x<4で2, 4<xで0という形が得られる.



これで4個の楕円を切り出しておき, それから最初と同じ楕円を引いて下の線が描ける.



勿論面倒なのでは区間の切れ目で位置を合わせることで, Sqrt[33]などはそういう計算の結果であろうが, プログラムの骨組みの説明では無視させて貰った. 面白かった.