2026年3月27日金曜日

干支の計算

「今年はうま年だ」のように, なに年かが気になるのは, 現代人では正月 の頃だけであろう. また「初午」, 「土用の丑の日」, 「三の酉」のよう に日付けにも十二支が対応していることも常識であろう. 十二支は曜日の ように, 正確に順番に対応して来たので, 利用できる場面が多い.

歴史上の事件ではその年の干支を付けて, 「壬申の乱」とか「辛亥革命」 とか, 干支で識別されることがある.

しかし最近は「今年の干支はひのえうま」や, 「庚申(こうしん)の日」と か十干の方まで気にする人は絶滅危惧種かも知れない.

絶滅寸前かも知れないが, 私は時々「この前の甲子(きのえね)は何年だった か」のように, 年の干支が知りたくなることがある. また青木信仰「時と 暦」によると, 日本書紀には漏刻(水を使った時計)の使用開始が671年の「夏 四月丁卯朔辛卯」と書いてあるそうで, これも日付けにしてみたい.

干支は表Aの十干(天干ともいう)と, 表Bの十二支(地支ともいう)を順に組 み合わせたものである. 10と12は互いに素ではなく, 最大公約数が2, 最 小公倍数が60なので, 組合せは表Cの様に60個になる.

十干の方は「こう, おつ, へい, てい」位までは音読みで知っている人は いるであろう. 十二支は訓で読むと「ね, うし, とら, ..., いぬ, い」で, 大 体の人は知っているに違いない.

百人一首には喜撰法師の「わが庵は都のたつみしかぞ住む 世をうぢ山と 人はいふなり」があり, それをもじって「わが庵は都のたつ, み, うま, ひつじ, さる, とり, いぬ, い, ね,うし, とら, う」と本歌取りした人 がいた.

しかし干支の組合せは音読みの方が普通なので, この機会に表の音読み を覚えのはどうか. 次の音読みは旧かな遣いで書いてあり, 実際には 「甲」, 「庚」は「こう」,「丑」は「ちゅう」, 「卯」は「ぼう」と読 む.

さらに十干や十二支の番号も知っていると役立つ. 十干は「こう, おつ」, 「へい, てい」の ように2つずつ組にして覚えると, その組が「き, ひ, つち, か, みづ」に対応する. また十二支は「し, ちう, いん, ばう」, 「しん, し, ご, び」, 「しん, ゆう, じゅつ, がい」 と4つずつにすると, それぞれの組の先頭の年がうるう年になるので都合がよい.

さてこれからが表題の「干支の計算」である. 表Cの干支の一覧が 手元にあり, 今年の干支が「丙午」であることを知っていれば, その前の「甲子」を知るには, 2026年の「丙午」 がn=42で, 「甲子」はn=0だから, 2026-42=1984と判る.

漏刻の使用開始は, 朔(4月1日)の干支, 丁卯がn=3で, 開始日の 干支, 辛卯がn=27だから, 1+(27-3)=25日と判る.

しかし, 表Cのような一覧表なしで, 干支の番号(0<=n<60)を知りたい時 はどうするか. もちろん, ここでは十干の番号(0<=s<10)と十二支の番号 (0<=b<12)は判っているとする. つまり「丙」のs=2, 「午」のb=6 から「丙午」のn=42を知る方法の話である.

下の図を見て欲しい. 縦に3つの図がある. 上の図は, 横軸のnに対して, 赤で示すs, 青で示すbの対応を示す. 赤線, 青線の左端の塗り潰しの 丸は閉区間, 白抜きの丸は開区間を示す. つまりn=10 の時のsは一番左の赤線の値ではなく, その次の赤線の値, 0であることを 示す.

中の図は, s-bを示す. 10<=n<12でs-bが負になっているが, これを 12だけ上に移動すると10になり, 12<=n<20の線と一緒になって, 10<=n<20の区間でs-bの値が2になる. 他の負の値の場所も同様になる. それが下の図である. これで判明したことは, sbからnを作るに は, この値の2を5倍してsを足せばよい. Schemeで書くと
(define (nval s b)
  (let ((d (- s b)))
    (+ s (* 5 (if (< d 0) (+ d 12) d))))))
丙午の場合(s=2, b=6)なら
  (nval 2 6) => 42
Schemeの関数(modulo n d)は, 0<=r<dの剰余を返すから
(define (nval s b)
  (+ s (* 5 (modulo (- s b) 12))))
と書ける.

Schemeでなくても, Pythonのように負の分子に正の剰余を返す言語なら
def nval(s,b):
    return s+5*((s-b)%12)
でもこの方式だと, 丁卯(s=3, b=3)と辛卯 (s=7, b=3)の差は, それぞれのnを 計算してから差をとることになる. sbのそれぞれの 差からnの差が得られると嬉しい. そこでそれぞれの差分dsdbの差とnの差の 関係を作ってみると, 次の表のようであり, これは何と, sbからnを得るのと同じであった. 考えてみるとまぁ そうなるのは当然である.
ds=7-3=4, db=3-3=0 だから
4+5*((4-0)%12)=24
である.

これで今回の話題は完了した. 以下は蛇足である.

いつか書いたかも知れないが, グレゴリオ暦の曜日を知るには, その日のユリウス日JDに 1を足して7で割った剰余をとると, (日曜を0とする)曜日の番号を得る. この方式が干支に 使えないかとやってみると, JDから1を引いて10で割った 剰余は(甲を0とする)十干の番号になる. さらにJDに1を足して12で割った剰余は(子を0 とする)十二支の番号になる. 2025年12月21日は日曜で甲子であった. その日のJDは 2461031. それを7, 10, 12で割った剰余は6, 1, 11である. JDから干支を 計算するには, s=(JD-1)mod 10. b=(JD+1)mod 12から, このブログの式 n=s+(s-b+12)mod 12 *5で 計算してもよいが, JDを60で割った剰余が11なので, JD-11を60で割るのが 簡単である.

整理すると
曜日 (JD+1)%7
十干 (JD-1)%10
十二支 (JD+1)%12
干支 (JD-11)%60
だけ覚えればよい. 偶然だが足したり引いたるがすべて1なのが覚え易い. 私のiPhone には, 個人用電卓があり, JDを計算する機能もあるから, この情報は貴重である.

干支とは関係ないが, 暦の最重要な計算は復活祭である. puzzle and paradoxにある アルゴリズムでは, 今年は4月5日. ということは, ConwayのいうDoomsdayは今年は 土曜日だ. この話題はまたいつか.

2025年5月12日月曜日

曜日の計算

我が家の書斎にのJohn Conwayへのインタビュー(Scientific American, 1999年4月号)の古いコピーがあった. それによると, Conwayは日付から曜 日を算出するのが得意であったらしい. もちろんそれには練習もした. 計 算機にログインした時, ランダムに日付を提示するようにし, その曜日を 暗算して練習したという. 2秒以内で正解が得られるようになったと書い てあったから驚きである.

立教大学の島内先生も曜日の計算は素早く, その話はいつぞやのこのブロ グにすでに記述した通りである.

私も曜日の高速計算を隠し芸にしたいが, どうすればいいか. いつもはブ ログにも何度か書いた例の 2,5,5,...の表を使う. 当日と同じ年内のことだ と, Doomsday方式も便利で, 今年(2025年)は「金曜」を覚えておくだけで よい. Conwayの曜日計算はDoomsdayの方式に違いない. その辺のことは, Winning Waysの第4巻にある.

問題はその年の定数, 若しくはDoomsdayを得ることにある. 私のは島内さ んと同様で, 西暦年数の上2桁をc, 下2桁をbとした時, (b+b//4)にcが19 なら2を引き, 20なら4を足して7の法をとっていた. 例えば2025年なら, c=20, b=25だから(25+floor(25/4)+4)%7=(25+6+4)%7=0. しかしこれはb が大きいと, 大数を扱うことになり面倒だ.

Winning WaysにあるConwayの方法は意外である. bを12で切り捨て除算し, (b=25ならb//12=2)その商(この例なら2)に剰余(同1)を足し, さらにその 剰余を4で切り捨て除算した商(同0)を足すものである((2+1+0)%7=3 それ にc=20の4を足して7で法をとるから0).

私のやり方と随分違う算法に見えるが, 取り敢えず私にやり方(Aとする) とConwayの方法(Bとする)で, bの0から35までの, 7で法をとる前の値を計 算し, 12個ずつ並べてみると

A  0  1  2  3  5  6  7  8 10 11 12 13
  15 16 17 18 20 21 22 23 25 26 27 28
  30 31 32 33 35 36 37 38 40 41 42 43 
  ...
B  0  1  2  3  5  6  7  8 10 11 12 13
   1  2  3  4  6  7  8  9 11 12 13 14
   2  3  4  5  7  8  9 10 12 13 14 15
  ...
つまりAでは2行目, 3行目は1行目に15,30を加えたもにであるのに対し, B では1,2を加えたものになっている. 15,30は7を法とすると1,2だから, 7 で法をとった結果は同じになるのであった. Aではbが99だと99+24=123まで 大きくなるのに, Bだと8+3=11にしかならない.

というわけで, また我々には12の倍数なら8倍くらいまでは常識だから, 私も最近はBを愛用している. しかし, 12で割った剰余に, さらにそれを4 で切り捨て除算をしたものを足すのは, 計算するよりそれの7での法をとっ た
0  1  2  3  5  6  0  1  3  4  5  6
を足す方が簡単のように思い, 実際の計算では表を使う.

従って, グレゴリオ暦のc*100+b年m月d日の曜日は,

西暦年数の上2桁cの定数: [4,2,0,-2][c % 4]
西暦年数の下2桁bの定数: 
  b//12+[0,1,2,3,5,6,0,1,3,4,5,6][b%12]
月mの定数: 
  [2,5,5,8,3,6,1,4,7,2,5,0][m-1] 
  ただし閏年の1,2月は1,4
日dの定数; d
これ(上からそれぞれをc項, b項, m項, d項とする)を加算して7の法をと るという計算になる. cに関する項は実用的にはcは19か20なので, -2と4 だけを覚えておけばよい.

また, bの項で使う表をbs, mの項でのそれをmsということにする.
この12要素の2つの数表bsとmsを覚えるのはそれ程面倒ではない. どちら も簡単な規則で出来ているから, すぐに構築できる. (msでは4月と9月で 7の法を取る前の値にしてある.)

ちょっと練習問題を. グレゴリオ暦になった最初の日, 1582年10月15日. ものの本には金曜とある.
c=15だからcの項は-2.
12*6=72だから, 82//12=6 82%12=10, bの項は6+5=11
10月だからmの項は2
-2+11+2+15=26 26%7=5で金曜であった. 
母親が水曜であることだけ覚えていたGaussの誕生日 1777年4月30日.
c=17だからcの項は2
77//12=6 77%12=5 bs[5]=6,
4月のmsの値は8
2+6+6+8+30=52 52%7=3 で水曜であった.
曜日の高速計算のキーポイントはこの2つの表引きが瞬時に出来ることである.

bsの表では12の値は4つずつ3組になっていて, 左の4個は見出しを二進法 にした時, 4のビットも8のビットも立っておらず, この組は0,1,2,3につ いて値も0,1,2,3だから簡単である. 中央の4個の組は4のビットが立って おり, 4,5は1ずつ多い5,6; 6,7は0,1, 右の4個は8のビットがあり, 値は5 ずつ少ない.

msの表についていえば, カレンダーの曜日は3ヶ月で大体元に戻ることを認識 するのが重要である. つまりその3ヶ月が, 30日, 31日, 30日で合計が 91日だと, 丁度7の倍数だから, 4ヶ月目は3ヶ月の最初と同じになる. 4月と 7月が同じ曜日関係になる.

90日だと曜日が1日戻り, 92日だと1日進む. 平年の1,2,3月は90日だから, 4月は1月より1日戻り, 4,5,6月は91日だから4月と7月は曜日が同じだ.

Doomsdayの規則には1月と2月への言及はないが, 私は1,2月は平年なら 10,11月と同じ, 閏年なら7,8月と同じと思っているが, 平年の1,2月の2,5 は10,11月の2,5と同じで月の大小も同じである. また閏年の1,2月の1,4は 7,8月の1,4なのと同じで,こういう事に気付いているとmsの表も覚え易い.

最近はこういう考えで曜日の高速計算に挑んでいるが, 私自身が歳を取ったことも 言い訳にして, 仲々高速にはならない. しかし結構楽しんではいる.

2025年4月23日水曜日

ユリウス日

前回のこのブログでは, 暦象年表のトピックスにあったグレゴリオ暦か らユリウス日(jdn)への変換, またその逆の変換のプログラムの仕掛けを 解明した. かなり巧妙に出来ていて, ビューティフルコードといってもよ さそうである.

しかし私は, ビューティフルコードとしては, 見る人が「このプログラム は確かにこの問題を解く」と確信出来るようでありたいと願う. そういう こともあって, また最近 グレゴリオ暦の年月日からユリウス日への変換とそ の逆変換のプログラムを書いたのでお見せしたい. 先頃のブログ, Fixed Day Numberで紹介した式も活用している.

グレゴリオ暦の年月日からユリウス日への変換
def greg2jdn(y,m,d):
    def leap(y):
        return y%400==0 if y%100==0 else y%4==0
    return(
        y*365+y//4-y//100+y//400+d+1721425  
        -((4777-367*m)//12
          -(0 if m>2 else(1 if leap(y)else 2))))
まぁこれは見た通りであろう. 局所関数leap(y)は, y年に閏日があるとい う真理値を返す.

本体はy*365がy年末まで平年としての日数. y//4がその間の閏年の 数. -y//100が, 100の倍数の年の数で, グレゴリオ暦で閏にしない年の数. しかしこれでは, 1600年や2000年なども引くので, y//400で修正する.

その後+dは, 前月末までの日数にその月内の日数を足す. +1721425は -4712年からの値にする為の補正. 次の行の長い式が, 前月末までの 日数を計算する. このプログラムは一目瞭然だと思う.

例題をやってみる.
print(greg2jdn(1582,10,15)) => 2299161
    (グレゴリオ暦の初日)
print(greg2jdn(1,1,1)) => 1721426
    (Fixed Day Numberの初日) 
逆問題の方は, 局所関数としてminx(x,xs)を使う. これはxからxsの数を 次々と引き, この項を引くと値が負になる直前で止め, 引けた項数と, 最後の剰余を返す.
def minx(x,xs):
    i=0;
    while(i<len(xs)and x>=xs[i]):x=x-xs[i];i=i+1
    return [i,x]
例えば, 8と[1,3,5,7,9,11,13,15,17,19]が与えられた時, 先ず1を引いて 7が残り, 3を引いて4が残り, 5を引くと-1になるので, これは引かず, 1 と3の2項をを引き, 4が残る場合なので, [2,4]が返る. つまり前の項2が整数 平方根; 後の4が剰余. 8=22+4を示す. xを0から19まで 変えて計算してみる.
list(map(lambda x: 
         minx(x,[1,3,5,7,9,11,13,15,17,19]),
         range(0,20)))
とすると
[[0, 0], [1, 0], [1, 1], [1, 2], [2, 0], [2, 1],
 [2, 2], [2, 3], [2, 4], [3, 0], [3, 1], [3, 2],
 [3, 3], [3, 4], [3, 5], [3, 6], [4, 0], [4, 1],
 [4, 2], [4, 3]]
となる. この逆変換の基本方針では, 残りの年の先頭が平年なら, 2月28日の後に 無理やりに2月29日に相当する日を挿入する. つまり残りのユリウス日が >=59なら, それに1を足すのである. 一見面倒なようだが, これが結構う まくいく.

ユリウス日からグレゴリオ暦の年月日への変換
def jdn2greg(jd):
    def minx(x,xs):
        i=0;
        while(i<len(xs)and x>=xs[i]):
            x=x-xs[i];i=i+1
        return [i,x]
    jd=jd-1721060
    a,jd=divmod(jd,146097)
    b,jd=minx(jd,[36525,36524,36524,36524])
    if(b>0 and jd>=59):jd=jd+1
    c,jd=divmod(jd,1461)
    d,jd=minx(jd,[366,365,365,365])
    if(d>0 and jd>=59):jd=jd+1
    m,jd=minx(
        jd,[31,29,31,30,31,30,31,31,30,31,30,31])
    return([a*400+b*100+c*4+d,m+1,jd+1])
局所関数minxは前述のもの.

jd=jd-1721060の引く値は, 0年1月1日からにユリウス暦だったして, そこを 起源にする変換である.

1721060=greg2jdn(1600,1,1)*5-greg2jdn(2000,1,1)*4

a,jd=divmod(jd,146097) は, 146097=365*400+97が4世紀の日数で, aが 4世紀が何回あったの数, jdは現在の4世紀になってからの日数.

b,jd=minx(jd,[36525,36524,36524,36524]) は, 現在の4世紀で今はどの 世紀かを見る. 0<=b<4. jdは世紀内の日数. ここでminxを使う.

bが1,2,3の時は, 先頭の年が100年で割れて閏年なのに閏日なしなので, if(b>0 and jd>=59):jd=jd+1 で閏があったように補正する.

c,jd=divmod(jd,1461) は世紀をまた4年組に分ける. 1461=365*4+1; 0<=c<25. d,jd=minx(jd,[366,365,365,365])

if(d>0 and jd>=59):jd=jd+1 は閏を入れる補正である.

こちらも例題.
jdn2greg(2299161) => [1582, 10, 15]
jdn2greg(1721426) => [1, 1, 1]
初めの例題でのa,b,c,dの値はa=3, b=3, c=20, d=2であった.

2025年4月19日土曜日

ユリウス日

今回のブログも国立天文台, 暦象年表のトピックスにあったユリウス日のアルゴリズムの続きだ. 今回は反対に, ある日のユリウス日からそのグレゴリオ暦の年月日を計算するものである.

直感的にもこちらの方が面倒なのは分る. 3つの数を掛けた積から, 元の数を 探すようなものだから.

その方法はこうだ.
def jdn2greg(jdn):
    l = jdn + 68569
    n = (4 * l) // 146097
    l = l - (146097 * n + 3) // 4
    i = (4000 * (l + 1)) // 1461001
    l = l - (1461 * i) // 4 + 31
    j = 80 *l // 2447
    d = l - 2447 * j // 80 
    l = j // 11
    m = j + 2 - 12 * l
    y = 100 * (n - 49) + i + l
    return [y,m,d]
前回のプログラムもそうだったが, 今回もif文がなく, 切り捨て除算ばかり なのが目立つ. O'BeirneのPuzzles & Paradoxesにある復活祭公式を 見る気分だ. (そういえば, 今年は明日4月20日が復活祭.)

まず分りそうなところから調べると, 下の方に m = j + 2 - 12 * lというのがあり, 前のプログラムのように, 1,2月は前年の11, 12月にし, 3〜12月を1〜10月に していることが分る.

また, y = 100 * (n - 49) + i + lから, nは, -4900年を基準にした世紀数 らしい. そこで前回同様の絵を描く. この図の左下, 1500年3月1日の(まだユリウス暦の 時代だがレゴリオ暦とした)jdnは青文字の2268983. この箱内の日数は赤文字の 2337552. 従って, -4900年3月1日のjdnは-68569. プログラムの先頭の 定数はこれであった. つまりlは-4900年からの日数であった.

次の行 n = (4 * l) // 146097 の146097は, 1460が365の4倍で, その 100倍にグレゴリオ暦の400年間の閏日を足したものである. lを100年の日数で割って 世紀数を出す代りに, lを4倍して400年の日数で割る. 理由は分らず. l = l - (146097 * n + 3) // 4 は世紀内の日数の計算.
i = (4000 * (l + 1)) // 1461001 は世紀内の年数の計算. ここも誤差処理の 為か, lを365では割らずに, 4000倍してから365の4000倍で割る. このiを 最後の年の計算で n+i のように使う.

l = l - (1461 * i) // 4 + 31 は年内の日数を計算する. 1461は閏日を 最後にした4年の日数で, 世紀内数に4年分を掛けてから4で割る. 最後に31を 足すのは, 1月を0ではなく, 1と出す為と思われる.

j = 80 *l // 2447 は 367 * m // 12 と同じように, 30と31が, 7,8月と 1,12月で連続する他は, 交互に現れるような式である.

f(l)= 80*l // 2447を, f(l)が1増えるようなlがどこからかを調べた表を 下に示す.

l = j // 11 で11, 12月(元々の1,2月)ならl=1, そうでなければ l=0に する.

最後の2行で年と月が正しく得られるという仕掛けであった.

誤差対策までは詳しく追わなかったが, このプログラムがどういう計算を しているかが判明したわけである. 中々面白い.

2025年4月17日木曜日

ユリウス日

国立天文台の暦計算室のウェブページには興味ある記事が満載だ. その中に2023年の暦象年表のトピックスとして「ユリウス日について」>というのがあった.

その最後の方に, グレゴリオ暦の年月日からその日のユリウス日(Julian Day Number)を 計算する式があり, その計算の仕方が面白かったので, 説明したい.

Pythonで書いたその式はこうだ. //は切り捨て除算である.
  def jdn(y, m, d):
    k = (14 - m) // 12
    return (
        (- k + y + 4800) * 1461 // 4 
        + (k * 12 + m -2) * 367 // 12 
        - ((- k + y + 4900) // 100) * 3 // 4
        + d - 32075)
私は普段, Schemeを使うので, Schemeで書くとこうだ.
  (define (jdn y m d)
  (let ((k (quotient (- 14 m) 12)))
  (+ (quotient (* (+ (- k) y 4800) 1461) 4)
     (quotient (* (+ (* k 12) m -2) 367) 12)
     (- (quotient (* (quotient (+ (- k) y 4900) 100) 3) 4))
     d -32075)))
暦の計算でなんとも鬱陶しいのは2月の末にあったりなかったりする閏日だ. 今回話題にする プログラムでは, 1年は3月から始まり, 1月と2月は前年の13月と14月にする扱いである.

また紀元前(BC, BCE)はマイナス何年の表記と1年ずれるのも面倒で, 暦の計算ではBCなど は使わないのが普通である.

さて, 「ある日」dのユリウス日jdn(d)の計算には, どこか基準になる日d0とjdnの分かって いる日d1を決め, d0からd1までの通日n(d1)と jdn(d1)の差(Δd)を, dの通日n(d)に足す.

Δd=jdn(d1)-n(d1), jdn(d)=n(d)+Δd

このプログラムでは, d0をユリウス日の開始日の-4712年より前で, 400で整除出来る年の -4800年3月1日として, その日からの通日を使う.

通日の計算は次の図を見て欲しい. いまjdnの分かっている日d1を, グレゴリオ暦への改暦 (1572年)後の1600年3月1日にし, 「ある日」dを1600年10月21日にして, ユリウス日の計算の進行を見よう. この日は 日本の歴史では, 旧暦の慶長5年9月15日, 関ヶ原の合戦があった.

私の「個人用電卓」 で10月21日のjdnを予め計算すると2305742である.

まず-4800年3月1日から1599年14月28日までの, 閏日を無視した長方形を 描く. 閏日は, 4行ごとの最後に入る. 100年毎や400年毎の補正は, 100行ごとの最後, 400行ごとの最後に入る. 長方形の最下行の右端に 飛び出しているのが, 1600年2月(1599年14月)29日で, 1600年は100 で整除出来るが, 400年でも整除出来るから, 閏日は入れる.

365*6400=2336000
4年毎の閏日は 6400/4=1600,
100年毎の閏日は 6400/100=64,
400年毎の閏日は 6400/400=16.

従ってこの(多少の飛出しのある)長方形は, 233600+1600-64+16=2337552. 左下の赤字の値で, 3月1日の 通日である.

次は1600年内の計算で, 3月0日から「ある日」までの通日を計算する. それには3月0日から m月0日までの通日が必要になる. これに,

f(n)=367*n//12

が使えるかもしれない. nを0,1,2,...と替えながらこの値と, f(n+1)とf(n)との差Δfを 計算してみると, 次のようになる.

Δfは赤線のように30と31の12個の列が循環し, 途中31が連続する箇所が2回ある. これが7月, 8月および, 12月, 13月に相当するわけで, mの行に対応する月を記入した. f(n)が各月までの通日になる. 3月までの通日を 0にしたいところだが, それは最後の補正の時にやることにして, これを使う.

大体の様子が分ったので, もう一度プログラムを見る.
  def jdn(y, m, d):
    k = (14 - m) // 12
    return (
        (- k + y + 4800) * 1461 // 4 
        + (k * 12 + m -2) * 367 // 12 
        - ((- k + y + 4900) // 100) * 3 // 4
        + d - 32075)
最初のkの値は, mの1から12に対して, 1,1,0,0,0,0,0,0,0,0,0,0,0,0 となり, 1月, 2月を別扱いにする時に使う.
次の行, (- k + y + 4800) * 1461 // 4 は, y - k で, 1,2月を前年に繰上げ, -4800を足して基準を-4800年にし, 1461(=365+365+365+366)を掛けて4で 切り捨て除算し, 4年毎の閏日を処理する.

次の行, + (k * 12 + m -2) * 367 // 12 は. m=3, 4, ..., 12を. 1, 2, ..., 14に変換して, m月0日までの通日を得る. 但し3月の欄で見るように30日多い. これは Δに組み込むことにする.

その次の行は100年の補正である. 年を100で割り世紀ごとの補正にする. 0,1,2,3,...,7 について, * 3 // 4をやると, 0, 0, 1, 2, 3, 3, 4, 5,...が得られる. 1,2,3と 増えるのは, 100で割った値が4で割れないで, 閏にしない年, 2行上では4で割れる年はいつも閏にしていたのから これを引いて補正した. 0,0や3,3のように繰り返すのは閏にする年で, 補正にはならない. ただこれを見ると, 補正しないのは-4800年の次の世紀年で, これでは1世紀遅すぎる. その修正のため, ここでは4800ではなく, 4900を足すのである.

改で左下を見ると赤字は前年までの通日, オレンジ色は3月1日までの通日, 従ってn(d1)は 2337583になる. 一方3月1日のユリウス日jdn(d1)は2305508でΔは プログラムにあるように, 32075になる.

1600年10月21のjdnは 2337552+244+21-32075=2305742 と得られた.

2025年3月14日金曜日

暦の使い方

私は暦が好きなので, Shakespeareの劇を読んでいても「暦」の文字があると立ち止ってしまう.

例えば, 誰でも思い出すであろう「夏の夜の夢」3幕1場で, 6人の職人が森の中で芝居の稽古をする場面:
スナウト おれたちが芝居をやる晩に月は出るのか?
ボトム 暦だ, 暦だ! 今年一年の暦を見て, 月が出るか調べるんだ, 月は出るか.
クインス うん, その晩月は出る.
(ここでの引用は, 私と同時代人である小田島さんの訳による.)

旧暦の国の人なら, 日付けで月のありなしは分る.
1日の前後は月出は夜明, 月入は夕方
8日の前後は月出は夜中, 月入は昼間
15日の前後は月出は夕方, 月入は夜明
22日の前後は月出は昼間, 月入は夜中
である. だから明治5年12月2日, 旧暦の最後の日は, 地球照で鎌のように細く光る三日月が 西の空にあったに違いない.

英国は, というかヨーロッパの殆んどは太陽暦だったから, 月の様子を知るには 暦が必要だったらしい.
しかしまだ疑問がある. 今我々の手元にある普通の暦は, 日付と曜日の対応を示 すのが主目的で, 次に祝日, 二十四節気, 雑節, さらに詳しいのには大安や友引の六曜の日付 も記載がある程度. 日出, 日入, 月出, 月入の時刻や月相は殆んど書いて ない. 天体の情報があるのは天文暦almanacだが, 英文「夏の夜の夢」の 当該部分はcalendarになっている.

東京の毎日の日出入, 月出入は, 理科年表の暦部や 暦象年表あるいは新聞の隅をよく見なければならない.

ところが1幕1場では:
シーシュース 楽しい日々をあと四日すごせば
新月の宵となる.
ヒポリタ そうすれば新月が, 天高く引きしぼられた
銀の弓のようにかかり, 私たちの婚儀の夜を
見まもってくれるでしょう.

だから, いつが新月か知る人は知っていた. 婚儀の日は新月なのに 「うん, その晩月は出る」というShakespeareの無頓着ぶりも楽しい.

ユリウス暦を採用した張本人「ジュリアス・シーザー」2幕1場では:

ブルータス そうだ, 明日は三月十五日であったかな?
ルーシャス さあどうでしたか.
ブルータス 暦を調べて, すぐ知らせてくれぬか.
ルーシャス かしこまりました.
ルーシャス 旦那様, 三月は十四日すんだところです.

正確に管理された日めくりカレンダーでなければ, 今日が何日かを知るの も普通には難しい. 最近ならスマホが手元にあれば分るが... さらにローマの暦の 日付は非常にややこしいから, 何日経過したかを彼等はどう計算したのか 興味がある.
ローマ暦のややこしい日付けに関しては この解説を見て欲しい.
その3幕1場で:
シーザー 三月十五日がきたぞ.
占い師 きましたが, シーザー, まだすぎさってはいません.

この「まだすぎさってはいません」がずっしり重い.

Shakespeareの史劇に登場する薔薇戦争時代で最も有名で残忍で話題も多いのは 「リチャード三世」であろう. 最近でも遺骨が発見されて改葬されたり, エドワード四世 の2人の王子はロンドン塔で殺害されたのではないというニュースがあったりした.

「リチャード三世」3幕8場:
リチャード おい, 暦をとってくれ.
だれか今日太陽を見たものはおるか?

これは日出の時刻を知ろうとしたものらしい.

「冬物語」の4幕4場, ごろつきのオートリカスが道化に, お前は酷い目に会うぞと驚かす場面 では:
オートリカス 一年中で一番暑い日と暦に出ている日に煉瓦塀にもたせかけられ, 太陽の カッと燃える目に見つめられながら, ...

7月22日に大暑と書いてあるようなことをオートリカスはいったのだろう か. 理科年表の「気温の最高および最低記録」のようなものを指すのか.
ついでだが, 昔の人は時刻を何で知ったか? ヨーロッパの町にいると, 教会の 鐘の音で「ヨーロッパに来たなぁ」と思う. でも教会から遠い戦場では, 太陽の 方向以外に時刻を知るのは難しかったであろう.

ロミオとジュリエット 1幕1場:
ベンヴォーリオ おはよう, ロミオ.
ロミオ 早いのか, まだ?
ベンヴォーリオ 九時だよ.

近くの教会の鐘が鳴ったか.

再び暦に戻って:
「マクベス」 4幕1場, マクベスといい合った魔女や幻影が消えた後:
マクベス どうした? 行ってしまったか? 畜生, この忌ましい時め, 暦の つづくかぎり呪われるがいい!

自然の「天地の続く限り」ではなく, 人工の「暦の続く限り」というのが 意外な発想である. Shakespeareの暦についての考えが少しは分ったように思う.

2025年1月26日日曜日

月齢カレンダー

私がこの数年愛用している予定表の話はこのブログに何回か書いた. ところで, 今年の予定表の表紙にある週日定数も月齢定数も共に0である. つまり下のようなのだ.

そうするとこの次にこうなるのは何年後かも気になる.

y年の週日定数, week(y)と月齢定数, moon(y)は次の式で計算する.

def week(y): return (y-2000+(y-2000)//4 
    +4)%7
def moon(y): return (((y-11)%19)*11)%29
そこで次に(0,0)になる年を計算してみたら, なんと2272年; 247サロス周期の後であった. 今年は昭和100年, 戦後80年, 阪神淡路大震災30年といわれるが, 暦屋にとっても誠に貴重な年なのである.

この表を見た序でに, 今年の復活祭を調べよう. まず3月21日の月齢は21. 次の満月は月齢45として4月14日. その日の曜日は1で月曜だから, 日曜はその6日後で4月20日になる.

もうひとつ序でに. Winning WaysのDoomsdayは3月0日の曜日なので, 今年は5, つまり金曜日である.