2013年7月27日土曜日

面積計を使う調和解析器

厳密にいうとこれは面積計は使わないが, Olaus Henriciが考えた似たような仕掛けの調和解析器の話だ. 下の図は, Henriciの考案したものを, チューリッヒの計測器メーカーCoradiが1890年ころに作ったものである.



このどっしりした機械を, 例えば前回のブログにあったような, 解析したい図形の上に置く. 枠の横に長い方をx軸に平行にする. この枠は3個の車輪で支えられている. 1個は手前中央に見える幅広のD. 残りの2個は枠の内側の両端でE. これらの車軸がx軸と平行なので, この枠はy方向にしか動かない.

枠を前後に動かすと, Eが回転し, 2個のEを繋ぐシャフトも回転し, 中央に上半分が見える車輪Cもy方向の移動距離に比例した分回転する.

車輪Cの真上に上下方向の回転軸があり, その下に枠に収まった球のようなものが見える. この球は下の車輪に接していて, やはりx軸と平行な軸で回転する. その球を支えている枠は, 上下方向の回転軸と同時に球の周囲を回転出来る.

回転させるのは, 回転軸の上に見えるプーリーHとそれに接するワイヤーである.

大きい枠の左には, ワイヤーがついていて左右に動きそうな枠Wが見える. この枠の手前の下にFなるポインターがあり, このポインターで関数の曲線を左から右に追跡するのである.

関数曲線の上下で枠全体が前後に動きながら, ポインターで右方向へ追跡すると, ワイヤーが動き, 従ってプーリーも回転して, 球を支える枠も回転する仕掛けである.

さて下の図が球を支える枠の構造だ.



中央のSが球で, yの矢印は枠がy方向に動くときに球が回転する方向を示す. xはポインターが右へ, つまりx方向へ移動すると枠が回転する方向を示す.

球にはこの図で見るように, 下と左に球の回転量を計る距離計のようなものが接している(この辺がいちおう面積計っぽいところだ).

この図のような位置で球が前後方向へ回転すると, 下の距離計は積算するが, 左のは動かない.

しかしプーリーの回転に従って枠も時計廻りにθだけ回転すると, 下の距離計はyの回転量のcos(θ)倍を計測し, 左のはsin(θ)倍を計測するようになる.

この枠はxが0から2πまで移動するときに丁度1回転するようになっている.

したがって下の距離計の積算は∫cos(θ)dy, 左の距離計は∫sin(θ)dy になり, それぞれB1, -A1に関係する値が得られる.

プーリーの直径を変えると, 枠の回転は2倍にも3倍にもなり, ほかの係数も求めることができる.

なんか不思議な機構だが, プログラムでシミュレートしてみた. お馴染のf=A1 cos(θ)+A2 cos(2θ)+B1 sin(θ)+B2 sin(2θ) である.

下の図は黒線がfを表す. 枠を2πで1回転したとき, つまりn=1の時の下の距離計の値をB1(青), 左のをA1(赤)で示す. またn=2の時, 下のをB2(緑), 左のをA2(橙)で示す.



単一の三角関数の場合もやってみると下のようになる. f=A1cos(θ), A1=1 がこれだ.



f=B2 sin(2θ), B2=1も示す.



振幅0に対応する距離計は最後に0になり, それ以外の距離計は係数に従った値が読み取れることが分る.

ソナグラフの存在しないころ, この解析器で音響の周波数解析をした人がいたらしい.

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