2010年10月15日金曜日

Maxwellの面積計

Maxwellといえば電磁気学で習う4つの式や悪魔(demon)を思い出す. 昔の学者はなんでも屋で, そのMaxwellは面積計も, しかも2種類も, 発明したことを最近知った.

Internetで探すと, The Scientific Letters and Papers of James Clerk Maxwellにあるこういう図


や, RutherfordJournalにあるこういう図



が見つかる.

今回は, この面積計の説明である.

下の図を見て欲しい.


これは面積計を上から見たところである. 水平に置かれた回転軸ABがあり, 右方に車輪Hがある. 左方には, 半球KCBがあり, Bが極に対応する. 手前の方, VXに沿って動くMと, 半球の中心Sを通る鉛直軸を結ぶ, 伸縮する棒MSがある. MSから直角に出た枠SDがあり, EFを回転軸とする全球ECB'Fが半球にCで接している. MがOの位置にあると, SDはASと重なり, 全球の赤道DB'が半球の極Bに接し, MがOから左へ行くにつれ, 全球はSを中心に上にあがるが, 球面同士は滑らないものとする. 従って, ∠OSMをθとすると, ∠BSC, ∠B'DCもθである.

面積を計測する時は, 面積計を平行に手前に引いたり, 遠方に押したりしながら, Mが図形の周囲を辿るようにする. RutherfordJournalの図の破線や, 台車の右下の車輪から推察出来る通りである. 面積計の押し引きに応じ, 車輪Hが紙との摩擦で回転し, 同軸の半球も回転し, それに接する全球も回転する.

OMの距離をy, OSの距離をh, 車輪Hの半径をR, 半球, 全球の半径をr とし, 面積計をdxだけ奥に押した時の全球の回転角dψを計算してみる. xの正方向は, Hと半球の向こうへの回転, 全球の手前への回転とする. Hの回転角(radian)は dφ=dx/R. するとC点で半球の緯線が鉛直方向に動く距離は, rsinθdφ. 全球のCでの緯線の半径はr cosθ. 全球の緯線も鉛直方向に同じ長さ動くから, 従って回転角dψ=r sinθdφ/r cosθ=dφtan θ. ところで, tanθ=y/h. ∴dψ=dφy/h=(dx y)/hR.

この面積計で円の面積を計ってみる. R=1, h=2, 円の半径=1とする.



最初, Mを計測対象の赤線の円の真下に置く. この時の半球と全球の中央の経線を赤で示す. 以後の図で,この経線の移動が分かる.



円周の1/4のところまでMが移動した. 面積計も奥へ移動し, 車輪Hが回転し, 半球の目印の経線も1radianだけ回った. ここまででスキャンした面積をオレンジ色で示す. それに相当した角度だけ, 全球も回転した.



Mは円の真上まで来た. 面積計はさらに奥まで移動した. 半球も全球も回転を続ける. 半球の回転角は2 radian. 半球の下側に入ったので, 破線で示す.



円周の右を辿って下がり, 3/4来たところ. 車輪も半球も先ほどとは逆に回転し, 面積を記録している全球も逆回転した.



Mは円周を一周した. 半球の経線は元に戻り, 全球の経線は, 面積πの半分を円周に一致して示す.

Maxwellはこの面積計を作成したわけではない. 実際に作るのは難しそうである.

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